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8月上旬、ムササビの巣穴(68号を参照)の真下に落ちているフンの変化に気づきました。正露丸ほどの大きさの見慣れたフンのほかに、ひとまわり小さいフンがちらほらと混ざっています。ほかのムササビが巣穴に出入りしているのでしょうか。虫の鳴き声が賑やかで、ひんやりと少し肌寒くなった10月の夕暮れどきに、屋根裏に起きた変化を追いました。10月7日、17時50分。屋根裏にライトを当ててみると、いつもなら赤い目が二つ光るところが、四つ光っています。よく見ると二つの目は小さく見えます。少しでも外のようすを探ろうと競い合うかのように、二頭のムササビが巣穴から顔を見せていました。18時過ぎ、まずは大きいほうのムササビが滑空して出巣します。巣から15mほど離れた南東の木に飛び付くという、おなじみの滑空コースです。こちらは昨年度から付きあいのあるムササビのようです。およそ2分後、今度は小さいほうのムササビが出巣しましたが、なんだかようすが違います。このムササビは滑空せずに、アパートの外壁に張りつき、「ジャッ、ジャッ」と爪を外壁にひっかけながら横へと移動していきます。それから電線の上をつたって、南西側のサクラの木へと移りました。なぜこのような手間のかかる出巣をするのか疑問です。まだ滑空することができないのでしょうか。 大の字になって壁に張りつく姿はどこか人の姿と重なるところがあり、片手をいっぱいに伸ばしながら、ゆっくりとひとつひとつ移動していく着実な姿は忍者のようです。帰巣するときはとくに、この方法をとることが多いようです。巣穴に暮らすこの親子ムササビをしばらく観察してみることにしました。狩野慶(ゆずりはら少年自然の里)=文・写真身近で自由にふるまう生きものを見守る巣穴の下に落ちているたくさんのフンFIELD.NOTE38アパートへと続く電線の上にたたずむ三頭のムササビ。一番右が親だと思われるFIELD.NOTE38

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