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雪かきのアルバイトがあると聞いたとき、私はどこか牧歌的な情景を思い浮かべていた。スコップを手に、せっせと雪を道の端に寄せ、時折思い出したように伸びをするような。だから、柴しばさき崎利としはる春さん(50)から、作業のようすを収めた写真を見せていただいたときはとても驚いた。大きな刃の付いた黄色い大型車││除雪車だ。1月17日午後4時ころ、河口湖のインターチェンジに向かった。今年の冬はほとんど雪が降っていなかったのに、昨晩はまるで取材を見計らったかのように雪が降り積もった。都留ではあっという間に解けてしまったけれど、まだこの辺りには積雪の名残が見受けられる。 11月から3月まで東富士五湖道路では雪かきがおこなわれている。区間ごとに担当があり、河口湖から静岡県小山町須すばしり走までが柴崎さんたちの担当だそうだ。アルバイトは日替わりの当番制になっていて、夕方の5時から翌朝の8時まで、路面の状況をうかがいながら待機している。天気予報通りであれば、それほど苦しい仕事ではない。けれど、今回のように天気が急に変わり、雪が降り出すこともある。そうなるとのんびりしていられない。当番ではない柴崎さんも「呼び出し」を受けて、朝から雪かきの仕事をしていた。「最近だとこんなふうに天気予報が外れるのはめずらしいね」。柴崎さんは苦笑しながら言った。インターチェンジ横に建てられている大きな車庫と小さな詰つめしょ所。ここが、柴崎さんの冬仕事の拠点となる。除雪車は、大きな一枚刃が「ワンウェイ」、刃を折りたたんで収納できるのが「三つ折り」と呼ばれる。三つ折りを車庫から出して見せていただいた。折りたたんでいた刃を開くと、車体の幅よりもずっと広くなる。高速道路を走らせると、一車線の道幅いっぱいになる長さだ。「じっさいに乗せてあげたら」と作業員の1人が声をかけてくださり、助手席に乗せていただいた。ドアの近くに設けられた足場を踏み台にして、助手席へとよじ登る。大きさによってはハシゴで登らなくてはならないものもあるのだとか。運転席から見「三つ折り」の刃を広げたところ大澤かおり(社会学科3年)=文・写真私は帰省するときに東富士五湖道路をたびたび利用している。チェーン規制の字を見るたびに、早く何とかしてほしいと思っていたけれど、誰がどうやってあの雪を片付けているのだろう。私の知らない仕事の裏側をのぞいてみた。雪かきの高速道路FIELD.NOTE10

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