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そう思うと、今回の経験で私自身が林業に一歩近づいたといえる。けれど、木は長い長い時間をかけて大きくなる。間伐をする姿を見知っても、その一部を垣間見たに過ぎない。苗木を植えて、木が太くなり、経済的価値が生まれるまで長い年月を要する。手入れをして木を育てること40〜50年、ようやく木を出荷できるのだ。人には途方もない時間だが、世代を超えて守られていく奥の深い仕事だ。日常生活のなかで山と接する機会が減り、山と縁遠くなってしまった昨さっこん今。林業を通じて、私は山に近づいていきたい。また、木を伐る現場に初めて立ち会ったことで、これまで「なんとなく」受け止めていた林業を具体的に考えられるようになってきた。そして、山の現状や林業に携わる当事者の思いと、現場の作業そのものとが結びついたことで、ようやく林業と出会ったのだという実感をもてた。身近でおこなわれている林業をきっかけにして、さまざまな視点から山に向き合うスタートラインに今ようやく立てたような気がする。現場に入ること、それがもっとも純粋に私の問いと学びを蓄えていく原点となるのだろう。山に入って黙々と木を伐り続けている。伐った木は機械で山から搬出して、木材市場へ出荷する。細野山には山の所有権をもつ「所有者」が40人ほどいる。それら「所有者」のもつ山を調査し区画を把握して、効率よく山の手入れをまとめておこなう。これを「集約化事業」と呼び、現在、南都留森林組合では細野山の集約化に取り組み、間伐を中心とした作業をおこなっているというわけだ。山に入ってみると、光が差し込み全体的に明るいことに気づく。まさに間伐の成果である。間伐とは、木の育ちをよくするために、木と木の間隔が窮屈にならないように伐採する作業だ。これにより、木々の隙間から光が差し込み、木の生育は促進する。間伐が進んでいる箇所とそうでない箇所を見比べると一目瞭然、明暗がはっきり分かるからおもしろい。そのうえ、光が降り注ぐところに立つと、足もとが暖かくて気持ちがいい。「10℃もあれば、暑くなってくる」と吉田さん。山の空気や気温にあらためて気づく。林業が「見えない」仕事であると指摘していた小林さんの話(71号・前編参照)を実感することができたのだ。足もとの枝を伐って、「逃げ道」を確保する吉田さん作業内容について小林さん(右)からうかがう筆者(撮影:香西恵)FIELD.NOTE26
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