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はずっとジャズなどの明るくてテンポの早い曲をやっていたらしい。「ここら辺で1曲ゆったりとした曲をスカッと弾けるようになったらかっこいいと思って」と藤本さんは笑う。永並くんは小学2、3年生のころから2人の姉についてくる形でピアノを始めたものの、これまではあまり練習が好きではなかったようだ。けれど、最近になって急にやる気が湧いてきたのだとか。藤本さんいわく、元から音楽が好きな子ならばどこかでスイッチが入ることがあるらしい。「何で、今までちゃんと練習してなかったのかわかんないや」。永並くんは少し照れくさそうに言った。「レッスンはたのしい」「小形山カフェ音楽教室」という少し変わった名前。藤本さんは「別に喫茶店をやっているわけではないんですが」と苦笑いする。由来は、弟さんと一緒に組んでいたバンドの名前から。一曲の音楽は、人生を大きく変えてくれるほどのものではないけれど、人の気分をほんの少しだけ変えてくれる。そのほんの少しが、カフェでコーヒーを飲んだ時の気持ちに似ている。そう藤本さんは考えている。藤本さんの音楽への入り口は、小学1年生から始めたエレクトーンだった。高校のときに初めて男性の先生に習うことになった。その当時は男性でエレクトーンの指導をしている人は珍しく、自分が誰かに楽器を教えるという発想が出てきたのもそのときからかもしれない、と振り返る。高校卒業後から、本格的にピアノも学び始め、現在は教室での指導のかたわら、地域のホールでの演奏会や自身で作曲したピアノ曲のCD制作をおこなっている。幅広い年代の人と関わっている藤本さんは、教えかたも年代や生徒の性格を考慮して決める。幼稚園の生徒にはテキストに沿いながら童謡などの身近な音楽から始めていき、感覚をつかんでもらう。また、藤本さんが手作りした音符や休符の記号のついたカードゲームや、30秒で指示された音を何個弾くことができるかを競うゲームで、たのしみながら覚えてもらう。小中学生からは、テキストを基礎にして調や和音を学ばせる。ある程度技術が身に着いたら好きな曲をやらせてあげるのも飽きさせないコツだ。社会人をはじめ大人の場合は、教室に来る時点で弾きたい曲があったり目標がしっかりしていたりすることが多いので、基礎もやるもののなるべく早い段階で好きな曲もレッスンしていく。どの年代を相手にしていても、ピアノや音楽をたのしみ、上手く弾けて喜ぶ生徒の姿を見たいという思いは変わらない。その曲のおいしいところ、音楽のプラスアルファのたのしみかたを教えたいと藤本さんは考えている。それは、藤本さん自身が誰かに習うことが好きだからかもしれない。先生の指導を受けて「自分はなんてできていないんだ!」、「ここまでやれるんだ!」と気づけること、それがレッスンの醍醐味だと藤本さんは思う。「レッスンはたのしい」そう語る藤本さんの顔は、ピアノ教室の先生でもありピアノを追求する演奏者でもあり、ただただ音楽が好きな一人の男性のようでもあった。今まで感じたことのない、言葉にできない感情を味わったり、無条件にたのしいと感じたり、音楽はいろいろなたのしみかたができる、と藤本さんは言う。ピアノを弾くばかりでなく、CDを聴いたりコンサートに行ったり、藤本さん手作りの音符カード42FIELD.NOTE
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