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れている。「きれいにできてるよ」と言ってもらえたし、はく製を見て愛着を感じることができたが、次こそは失敗なくきれいにつくりたいと思った。この一ヶ月後の2月9日、ハタネズミの仮はく製づくりをした。すでに一度経験しているので、それほど緊張もなかったし、作業のなかで戸惑うことも少なかった。それでもまだまだ時間がかかる。作業中に皮が乾燥し縮んでしまったため、綿を詰めて縫うと、隙間から綿が見えたままになってしまった。鼻すじの毛並みが少し逆立って残念だけど、手に乗せればかわいいネズミに見える。誰かに見せたい、見せたらどんな顔をするだろう。なぜ、「残したい」のか魚の骨格標本をつくったときにも考えたことだ。そのとき考えていたのは、「自分にとっての『比較対象』をつくりたいから」ということだった。今回もそれはもちろんあった。でも何か違う。私は完成したはく製を見て、「ほかの人に見せたいな」と思った。仮はく製は私がつくったもろく壊れやすい骨格標本今回つくったのは「仮はく製」だ。台の上でポーズをとっているような「本はく製」とは異なり、内蔵や肉などの腐りやすい部分を取って、なかに綿を詰めたはく製である。「はく製を作ってみたい」とは思うものの、私にははく製づくりの技術も知識もない。そのため、二回のはく製づくりではどちらも専門的な知識のあるかたに教えてもらいながら作業を進めることにした(簡単な工程と、はく製にした生きものについては、次のページに図とともにまとめた)。仮はく製をつくってみる1月8日にシロハラの仮はく製をつくった。簡単な作業だと聞いていたので、初めてとはいえそんなに時間はかからないだろうと、少々たかをくくっていた。だがやってみるとすごく難しい。野生の鳥を触る機会などなかったので、皮と肉を離す単純な作業でもとても複雑なものに感じた。慎重に進めていったため、一つのはく製を作るのに丸一日かかってしまった。そのうえ途中で背中の皮が少し破けてしまう。最後の仕上げでどうにか隠せたが、背中の羽が少し乱夏休み前にセミの抜け殻標本箱をつくり、本誌71号の時に魚の骨格標本をつくり、私は標本として「残しておくこと」の意味が、なんとなく分かったような気がしていた。ものを残しておくには、ほかにどんな方法があるんだろう。聞くところによると、湿度や気温が低い冬は、カビが生えにくかったり、虫が湧きにくかったりするため、動物のはく製をつくりやすい時期なのだそうだ。今回は鳥類と哺乳類のはく製づくりに挑戦した。持田睦乃(社会学科3年)=文・写真・イラストの冬仕事ちいさな博物館

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