FN73号
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自分より3、4倍長いときを生きて、数知れない経験を重ねてきた人々。そんな人たちが辿り着いた、今を前向きに生きる姿から、何か学べることがあるのではと思い、有志の参加者で成り立っている、2つの老人クラブにお邪魔させていただいた。   平井のぞ実(英文学科4年)=文・写真対局に熱中する囲碁教室のみなさん~老人クラブの活動から~つどいくらしを彩る負けず嫌いの集まり5月6日、都留市上谷にある文化会館の1階で開かれていた囲碁・将棋教室を訪ねた。会場の入口に来ると、カシャカシャと碁石が混ざり合う音が聞こえてきた。会員のかたがたが二人一組で碁盤をはさんで向かい合い、碁を打ち合っていらっしゃる。悩ましい表情で碁盤を見つめたり、腕を組んで考え込んだりと、誰もが真剣に勝負に取り組んでいるようすがうかがえた。そのなかで、ときどき誰かが歌を歌ったり、二言三言交わされた会話から笑いが起こったりしていて、雰囲気はとても和やかだ。「勝ちたい! 自分はあの人よりできる! と思っている人ばかりなんですよ」 囲碁教室の会長である佐さとう藤博ひろみ美さん(80)は、会員についてこうおっしゃった。「負けたら、悔しくて夜眠れないときもある」というほどのみなさんの熱中ぶり。「今日はお昼ご飯を食べる間も惜しかったから、今からなんですよ」と笑う佐藤さん。会場に入ったとき、後方の長机の上にポツンと置いてあったお弁当を思い出した。佐藤さんは、若いころから囲碁が好きで、対局で段位を積むため東京に出向いていたらしい。現在は日本碁院の定める段位で五段を保持していらっしゃるそう。そのほかの会員のかたも、もともと囲碁をやっていた人ばかりで、大会などで顔見知り同士ということが多い。お話を聞くなかで、佐藤さんは繰り返し「一度囲碁の楽しさを知った人はいつまでも止められない」とおっしゃっていた。また、このクラブは佐藤さんにとってどんなものですかとお聞きすると、少し考えたあとに「いい時間つぶしになってます」と返ってきた。 囲碁教室のみなさんの平均年齢は70代後半で、退職なさったり、ふだんはお家で農作業をなさったりしているかたがほとんど。若いころと変わらずに夢中になれるものが、いつの間にか時間つぶしになっている。みなさんにとっては自然なことのようだけれど、実りある時間を生みだして、人生を自ら満たされたものにしている姿が力強く、私にはとても眩しく映った。  FIELD.NOTE26

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