FN73号
27/48

謡う、喋る            5月10日、この日は民謡教室を訪れた。会場は囲碁教室と同じ文化会館。入り口から、高らかな歌声と三味線の音色が耳に届く。民謡教室の会長の三さえぐさ枝力つとむさん(83)を中心に、お話を伺うことができた。挨拶を交わしてすぐ、三枝さんに「お国は?」と尋ねられた。「兵庫県です」と答えると、「兵庫県の歌にはどんなものがあったかな」「確か前にやったことあるよねえ」と会話が飛び交う。下調べしてから足を運べば良かった、と思ったのと同時に、本当に民謡が好きなかたがたの集まりなんだな、と囲碁教室を訪ねたときと同じ印象を受けた。みなさんの入会のきっかけは、民謡が好きであったこと、タウン誌に紹介記事が掲載されていて興味を持ったこと、健康増進を図ろうと考えたこと、などさまざまだ。教室は午前10時から午後12時まで開かれていて、そのあいだ、歌うことはもちろん、ときには雑談で盛り上がることもあるそうだ。みなさんに、この教室の魅力についてお聞きしようと考えていたが、口々に「民謡が昔から大好き」「声を出すことで物忘れの防止になる」「おしゃべりが楽しい」「人と接する機会が持てて楽しい」といきいきした表情で語り出して下さったことで、教室の存在の大きさが伝わってきた。民謡という、表現を目的とした文化クラブであるためか、はつらつとしたかたばかりだ。 毎年3月には「おさらい会」という、老人クラブの詩吟や踊りの部門と合同の発表会があり、今年の4月には甲府で開かれた県の文化協会の主催する発表会に初めて参加したそうだ。また、老人福祉施設へ慰問に出向くなど、対外的な活動もおこなっている。活力に触れて取材を終えて、自分のお年寄りへの見かたが変わった。以前は「お年寄り」というと、若いころに比べて身体に気を遣って生活することで活動範囲が狭まったり、働くことでの社会参加から引退して生活の中心だったものがなくなり、暮らしの張りを保ちにくくなる。そんな、生涯のなかで少し消極的な時期というイメージがあった。けれど、2つのクラブを訪ねてお会いしたみなさんは、心の底から楽しいと思えるものに出会い、自発的に取り組んでいらっしゃって、部活動に打ち込む私たち学生と何も変わらない。それは、人生の先輩でありながら、同志ともいえる姿だった。どんな年齢の人でも、目の前の「今」の使いかたしだいで、その人の生きる時間に彩りを添えることができる。自分自身を振り返ると、やるべき課題もやってみたいことも、いつかそのうち、と先延ばしにしていることが多かった。老人クラブのいきいきしたみなさんと出会い、「今」と向き合うエネルギーをおすそわけしていただいた。民謡教室のみなさん開催日時・場所○囲碁・将棋教室●   毎月第1、第3日曜日・午前9時30分~16時♪民謡教室♪        毎月第2、第4木曜日・午前10時~12時       場所はどちらも都留市文化会館1階 ※7月から変更有り27

元のページ  ../index.html#27

このブックを見る