FN73号
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住職と消防団員が境内に集まり、式典が始まるは欠かせない。これらの露店によってふだんは静かなお寺が、賑やかなお祭りの会場へと一気に姿を変えた。半数近くの露店を学生が出店できたこと、そして会場がいかにもお祭りらしい雰囲気を出し始めたことで、1日を盛り上げられそうな自信がわいてきていた。私たちが商店街の法はっぴ被を着て、露店の手伝いをしていると、「お疲れさま」とさまざまな人が声をかけてくれる。おそろいの法被を着たことで、地元のかたとの一体感を味わいながら多くのかたとお話することができた。 お祭りには、人々の活気ある声や食べもの、流れる音楽や遊びといったわくわくする要素と、直接人と触れ合う機会があふれている。だからこそ、私たち手伝う側も楽しいのだ。  儀秀稲荷例大祭は、谷村の大火をきっかけとして始まった。そのため、もう二度と大火災が起こらないようにと祈祷をおこなう式典がある。式典には住職さんだけでなく、消防団員の方々も境内に集まり、厳粛な雰囲気があたりを包み込んだ。 何十年も前にこの地で大火災があったという事実は、今も例大祭を通して伝えられる。このお祭りに参加するということは、都留に続く歴史と出会うことなのだといえるのかもしれない。谷村の大火のような祭事の起源や由来を知ることで、過去からのつながりを直接感じることができるからだ。地元のかたにとっては当たり前の事実かもしれないが、県外から来た私たち学生が、地域の歴史や風習に触れられる機会は貴重である。 式典のあとに始まるのは学生団体による演奏だ。学生バンド、マンドリンクラブ、吹奏楽部が出演した。徐々に日が沈んでいくなか、境内にゆったりとした音楽が流れる。手拍子はもちろん、アンコールまで起きた団体もあった。大成功だ。演奏が終わるころには、どの露店も片付けが終わっていた。学生も帰りだし、あたりは少しだけ静けさを取り戻す。 しかし、お祭りはまだまだ終わらない。夜には地域住民の参加するカラオケ大会が開かれるのだ。会場に、どこかで聞いたことがある演歌が響き渡る。ここからは大人たちの楽しみの始まりだ。私たちは役目を終え、提灯が照らすお寺をあとにした。         商店街のかたとお祭りについて会議をしていた時、「当日はあまり人は来ない。期待はしないほうが良いよ」と言われていた。しかしじっさいは、会場は人々で賑わい、活気に満ちた場になったのだ。反省会で私たちは「希望が見えた」という言葉を聞くことができた。前向きな発言を受け、本当に一つの企画を成し遂げることができたのだという事実をしみじみと感じた。素直に嬉しい。これからも私たちは、商店街のかたや地域のかたとともに考えながら、多くの人の元気につながるような活動をしていきたい。◇◇29

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