FN73号
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と言われて探してみると、畑の一角、桐の木の根元に、角があった。ついこのあいだ草刈りをして、硬いものが当たったと思ったら、角だったという。あれよあれよと、角をいただいてしまった。 まさかこのような形で角にたどり着くとは。念願の角が手に入った(それも、この春取れたばかりの新しいもの)信じられないよろこびと、いっぽうで「自分で見つけた」とはいえない口惜しさがあった。 角探しは角にたどり着いたことで、一応区切りを迎えた。けれどやっぱり、本当の願いは自分で見つけることだ。生い茂った草のなかで、どんなふうに角が隠れているのか、露にぬれているだろうか。きっと自分で見つけなければ知ることができないことがある。取材に行くたび足をのばすたび、知らないことが広がっていく。 都留の四季をたどるのも、もうこの一度きりだ。ここで角をひろうことができるだろうか。ひろいもののゴールを胸に、あと少しのあいだ、このまちで探検を重ねたい。  してツチグリだと分かる)。「ホタルカズラ」の花もそうだ。この時期、「ホタルカズラ」という青い花が咲くことは知っていたが、ほんものを見たのは気づけば初めてだった。 写真で見たことのある生きものを、じっさいに野山で見つける。ホタルカズラの花が、まわりの勢いを増した草のなかでどのくらいの小ささで、青や紫の花色がどんなふうに見えるのか。胞子を飛ばしたあとのツチグリが道にどんなふうに転がっているのか、乾燥したら「蛸」の足がどのように変化するのか。じっさいに見なければ、本当にそれを知っていることにはならないのだと、今更ながら気がつくことになった。角にたどり着く しばらく山歩きに行かれずにいた5月下旬、思いがけないところで角を手に入れることになった。5月23日、編集部員の取材に同行して、古渡地区の梅農家のかたに梅畑を案内していただいた折のこと。鹿にサザンカの木の葉が食べられてしまう、というお話を聞いたので、鹿の角を集めていることを話したのだ。すると、たしかこのあたりにあった、〈ひろいもの記録〉実施日:3月19日、4月13日、4月18日、4月20日、4月24日、5月4日、5月28日、5月31日/場所:おもに「都留自然遊歩道」を歩いた。第1回、第5回は中屋敷フィールドへ/右頁写真:いただいた角。枝分かれの数で持ち主の年齢が分かるらしい。4つに分かれているので4歳か。草刈り機で切ってしまった跡がある。表面は白と茶で、細かな凹凸がある。すべらかで、ずっしりと重いのが嬉しい。シカの食べあとシカのフンホタルカズラの花ツチグリ31

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