FN73号
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2012年春、『フィールド・ノート』は創刊10周年を迎えました。10年の歩みのなかで私たちが大切にしてきたことはなにか。そしてこの先、大切にしていきたいこととは。今号から4回にわたって、活動を振り返りながら、これからのあり方を模索していきます。第1回は本誌に反映されているH・D・ソローの思想と、本誌裏表紙の「Glow Wild」のロゴに込められた想いに迫ります。10周年企画 第1回『ウォールデン 森の生活』を読み返す10周年企画班の検討会H・D・ソロー著『ウォールデン 森の生活』今泉吉晴・訳/小学館/2004本書は、ソローがウォールデン池のほとりに2年2ヶ月間住み、そこでの暮らしの記録をまとめたもの。ソローはここに、どのように暮らしたのか、つまり、どう生きて、何を考えたのかを綴っている。簡素な暮らしを送ること、移り住んだ森から散歩に出かけ、人間の社会(村)、鉄道、工場を観察することで見えてくるものがある。日ごと遠く、広く歩き、自分が見たものを大切にするソローの思想が、各章に展開されている。ソローの思想に近づく 今年の3月末から、ソローの著書である『ウォールデン 森の生活』を読み始め、ソローの思想のなかでも私たちの活動に生きているものをみつけるため、三回にわたる輪読会をおこないました。私たちの冊子づくりの活動に照らしあわせて読み解いていくうち、以下の三つのことが、本誌に息づいていることに気づきました。観察すること ソローは自ら行動することであらゆる視点から物事を捉え、自然、動物、人、その土地の記憶などを注意深く観察しています。普段なにげなく見るもの、慣れ親しんだものにもつねに新鮮な目を向け、発見や驚きに心を躍らせます。観察は観・・るだけではありません。ソローの観察には歩く、聞く、感じる、知ろうとすることが含まれています。私たちもまた、様々なことに興味をもち、新鮮な目で観察することを出発点に活動しています。考えること ていねいな観察を通して生まれる発見や気づきを、ソローは見過ごすことなく書き留め、いま目の前に起こっていることについて考察します。自身を引きつけるものに真正面から向き合いたいと欲した彼は、興味関心のあるものを積極的に追いかけるなかで、たとえ小さなことであっても、その背後に潜む意味や事柄を自分らしい発想で問い続けるのです。輪読を進める私たちは、彼のこうした考えかたに共感するとともに、忘れずに持ち続けたい姿勢として取りあげました。言葉にすること「私たちの影が、体から太陽に向かって吹き上がる汗を映すのと同じように、かすかでも漏らさず自分の考えを表明しましょう」(第18章 「結論」より) ソローは見聞きし考えたことを、比喩を用いたり、故事を取り入れたりしながら、想像力をはたらかせて綴っており、そのつど彼が抱いていた感情をありありFIELD.NOTE3434FIELD.NOTE

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