FN73号
35/48

◆ソローの思想をはっきりと『フィールド・ノート』に反映させていこうと考えたのはなぜですか?ソローという人は、森との関わりかたを通して私たちの生活全体を見通しています。さらに、森に住むという実践的な部分から色々な考えを私たちに伝えてくれていますね。私たちも、じっさいに外に出て人に会い生きものを観察することをしています。彼の、本物を見て考える、自分の経験を通して具体的に考える姿勢を、私たちとの共通点としてやっていこう。ソローの思想をひとつの柱にして、考えかたの基礎にあるものとして捉えていこう、ということです。◆このロゴができるまでの経緯はどのようなものだったのですか?24号(ロゴを使いはじめた号)が出た2004年は、地域交流研究センターができてから1年を迎えた年だったんです。そこで、改めてソローの思想を大切にしながら冊子づくりをやっていこうという気持ちを、一般の人にもわかりやすいようにロゴを作って伝えようとしました。ちょうどこの年、今泉吉晴先生(本学名誉教授)が『ウォールデン』を翻訳されて出版されたというタイミングもあったので、『ウォールデン』原著の初版本扉からイラストを使わせてもらいました。◆「Decent Wildlife and Our Community」の意味とは?ここでのキーワードはDecent││上品だとか寛大なとか、慎み深いということですね。私たちのテーマである自然と人との交流というのは、Wildlife││自然と、Our Community││生きものも含めた私たちの共同体という二つの言葉から成り立っていて、野生を育むなかで私たち自身も上品に慎み深く生きていきましょう、という意味です。◆さらにこれから『フィールド・ノート』に託していきたいことはありますか?私たちは地域に出て経験してその意味を言葉にして考える作業をしているんですが、これから先のことも考えていきたいですよね。未来の人や自然が、その人らしくその生きものらしく生きていけるように、思いを寄せながらやっていく必要があると思います。私たちのやっている作業は現時点のものだけれど、これが次の世代、その次の世代へと繋がるものにしていく。時間を超えて未来の人とも会話ができるような冊子にしていけたら、すごくいいなあと思います。裏表紙のロゴに込められた想いを探るべく、ロゴが使われはじめた経緯や、今後本誌に託していきたいことを、本誌発行人である北垣憲仁さんにうかがいました。と伝えています。こうした表現は、観察や考察を積み重ねたからこそできるのでしょう。私たちも、ていねいな観察や一つひとつの言葉を大切にしながら、自分の経験を整理して明確にしつつ、自分らしい表現を見つけ、文章にしていこうと思います。輪読会を終えて 10周年企画の初回に『ウォールデン 森の生活』を読み返すことになったきっかけは、本誌目次に添えてある説明の「ソローの思想」とはどういったものかという疑問からでした。その疑問を解決するために同書を手分けして読み進め、各自担当した章の概略を報告しあい、意見交換をしながらソローの思想を探ってきました。自分たちの活動と照らしあわせながら読むことで気づいた三つのことは、今後の本誌のあり方を模索していくうえできっとその柱となるはずです。私たちは輪読会を通して確認した彼の思想に寄り添いながらも、一人ひとりがソローともまた違う自分らしさを磨き、よりよい冊子にしていきたいです。35

元のページ  ../index.html#35

このブックを見る