FN73号
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青池恵津子(都留市下谷在住)=文・写真北垣憲仁=写真▲高尾町通りの山本書店:手前左(写真2)。 2011年12月撮影※ 『地域交流センター通信』第21号「図書館の活動をささえる人びと<展示リスト>3」参照掃除や正月準備の合間に市内の書店で求め、正月休みに読み始めるのが習わしだ。それは仕事や教養のためでなく、楽しみとして私が発売日を心待ちにする数少ない作品、あるいはほとんど唯一の作家といってよい(職業柄、ひんしゅくを買いそうだが)。もう20年来の習慣だが、一昨年(2010年)の暮れだけは買いそびれてしまった。気にしながらも昨年(2011年)、年末を控え次作が出そうな時期になり、もう店頭にはないのでamazonで探して(検索して)驚いた。1000円近くしたその本が100円以下で多数出品されている。結局私は上下巻を最安値の19円と26円で購入した。送料が260円。上下2冊より送料のほうがはるかに高い。さらに値段の下げ止まりをうかがいあちこちからの出品をチェックしていたので上巻を2冊カートにいれていたらしい。手元には2度に分けて上、上、下の3冊が届いた! 1年も経たずにこんなに安くなるのかと驚き、ものの値段や、価値の決まり方(?)に少し恐ろしさを感じた。これではまちの小売店は経営が苦しくなる一方なのかと思ったりもした。いわゆる神田などの古書店(現在ではネット上で蔵書が検索できとても便利になった)で、愛書家の手から手へと渡ってきた「書物」を求めるのとは異質な世界だ。 さて、山本書店の店先は、いつも先代の國くにお雄さんの手で季節の花々や木の枝葉などでディスプレイされ、通り(写真2)を歩く人びとの目を楽しませてくれた。店内には絵画や書(写真3)が飾られていた。息子さんの話では時間をかけて店を飾っていたという。そんな店で國雄さんはお得意さんと語らい、商いをしていた。こぼれるように愛想が良いというわけではないが、本を渡してくれるとき何かしらその本について、あるいは手配の苦労などについてコメントがついてきた。こちらも相当勉強しないと話についてゆけないことが多々だった。國雄さんは実家(静岡)が仏教寺院の関係者ということだが、時間があるとキリスト教会の墓地清掃などの奉仕をしていたという。また、國雄さんは、ご近所に住んでいた愛書家のK医師(図書館協議会※の委員を長くつとめ現在の都留市立図書館の基礎を築かれた一人)や、読書会や文化活動などでK医師のもとに集う人々とも親交が深く、その薫陶を受けていたときく。山本さんは、ただの物としての本を売る本屋さんではなかった。地域で人と人とのつながりを大切に、必要とする人びとに書物を手渡すことを自らの喜びとして商いに励まれ、長く学生の学びをささえ、まちの学術文化の発展に寄与していた。そんな書店や商いが次々にまちから消えてゆくことを残念に思う。店内に飾られた絵画や書(写真3)。2011年12月撮影▲43

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