FN74号
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-方言調査から見えたもの-都留市のあいことば都留市のかたとお話をしていると、会話の語尾に「ずら」をつけている場面によくあいます。私の地元ではつかわれない言葉を初めて聞いたとき、自分は地元を離れたのだと実感しました。都留市にはほかにどんな方言があるのでしょうか。都留市郷土研究会によって発行された『都留市の方言』(都留市郷土研究会/2008)と、この本の作成に携わった内ないとう藤恭やすよし義さん(80)と清しみず水正まさたか賢さん(84)からうかがったお話を参考に、言葉から都留市の暮らしを探りました。前澤志依(国文学科3年)=文・イラスト地域別の違い山梨県は「国くになか中地方」と呼ばれる甲府方面と「郡ぐんない内地方」と呼ばれる都留・河口湖方面とに分かれています。都留市の方言、と括る前にそこから方言の違いがあるそう。郡内地方の方言は国中地方でおもにつかわれる甲州弁よりも、神奈川・東京方面の方言に近いといいます。その理由をうかがうと「やっぱり政治的な違いがあったんだろうけども、一番大きいのは山脈の違いだよね。笹子峠を境にして東と西とに分かれるんだよね」と内藤さん。笹子峠は国中地方と郡内地方の境目になっている場所です。1069mの標高があるこの峠は昔、甲州街道のなかでも難所といわれていました。さらに、都留市のなかでも違いがあります。谷村地区は共通語(標準語)に近いそうなのですが、それでも、「下谷と上谷と比べると上谷のほうが荒いわ」と清水さん。トンネル一つ越えただけでも違うのだとか。さらに細かい違いがあることに、都留市のかたとお話をしていても気づいていなかったので驚きました。愛着をもってつかう言葉『都留市の方言』によると、「ずら」だけでなく、「べえ」を語尾につけることもあるそう。それを「べえべえ弁」といいます。「行くべえ」・「走るべえ」などと動詞につくときは、推量・意志・勧誘の意味をもちます。いっぽうで、「ごとんべえ」・「うしんべえ」・「かにんべえ」と特定の名詞につく場合もあります。さらに内藤さんは、親しい女性にも「べえ」をつけて呼んでいたこともあったそう。なぜ特定の名詞に「べえ」がつくのか。はっきりとはわかりませんが、内藤さんや清水さんと考えてみた結果、特定の人や生きものに対して、愛着をこめてつけていたのではないかという結論になりました。一つ例を挙げると、「ごとんべえ」は畑で見かけるカエルのことを指しているそうです(ヒキガエルやトノサマガエルを指しているのではないかという説もあります)。「かえるべえ」ではなく「ごとんべえ」という。この「ごと」はどこからきたのか。『都留市の方言』では、ヒキガエルの異名の「かさごうとう」からきていて、それが略されて「ごと」となっ14FIELD.NOTEFIELD.NOTE

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