FN74号
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FIELD.NOTE18工房のなかは…… JR塩えんざん山駅南口の階段を下りると、「Black bird glass works」の名前で活動している山やまもと本香かおり織さん(29)が黒いジムニーのなかから笑顔で手を振ってきた。車で工房に向かうあいだ、私が緊張して言葉に詰まったり、会話が途切れてしまったりしても、終始笑顔で明るくはきはきと話しかけてくださった。 工房は、車が多く通る道路沿いにあるガソリンスタンドの跡地にある。なかに入ると、まず大きな黒板が目に飛び込んできた。その横には小さな本棚。工房の真ん中には薪ストーブがあり、煙突が天井まで伸びている。黒板や薪ストーブの脚は工房で共に作業するアイアン(溶接などの作業)担当の職人が、本棚は山本さんが作ったもの。工房と聞いて薄暗い空間のイメージを抱いていた私は、今にもカフェやショップを開けそうな、一つひとつのものに山本さんが納得して置いたのだというこだわりが感じられる空間に驚いた。ガラスドアの向こう側では、たくさんの車が往来しているのが目に入るが、ここはドアの外とは別世界であるかのように感じられる。魅了する色「ふつうに大学にも通ったんですけれど、いざ就職となった時に、ふつうの企業に勤めるっていうのが全然想像できなくって。やっぱり何か作ることに携わりたいなと。あと色に対しての執着がすごいあったから、色を使った仕事に就きたいと考えていて。ガラスって面白いかもって、そこからなんだけど」 本当に突発的に思いついたことが「ガラス」だったらしい。そこで、大学4年生のときから2年間、夜間のインテリアの専門学校に通ったそうだ。通い始めたころ自由課題の授業で、道具の使いかたも分からないまま一人製作に挑戦したのが、最初のステンドグラスの作品だという。 ステンドグラスで使うガラスを見せていただいた。縦横50㎝ほどの板ガラスが何十枚も箱に入れられている。単色のものもあれば、三色ほどが混ざっているものもあった。そのうちの青っぽい一枚を山本さんが取り出し、光に透かす。すると、今までは見えなかった緑っぽい色や茶色っぽい色が浮き上がってきステンドグラス作家の作ったキャンドルランタンが、都留市つるにある「Cafe Natural Rhythm」に飾ってあると耳にし、じっさいに見てきた。幻想的な光がとても印象に残った。ふだんの生活で、ステンドグラスと関わることは稀まれだ。作った人はどんなかたで、なぜその道に進んだのかと興味が湧いてきて、お話を伺うことにした。別符沙都樹(国文学科1年)=文・写真工房のドアをくぐると取材のきっかけとなった「Cafe Natural Rhythm」のキャンドルランタンFIELD.NOTE

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