FN74号
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20都留市の旧5町村を巡る(2)旧宝村宝の「たから」探し 人口2600人ほどの宝は、都留市の北西に位置し、かつては鉱山業で栄華を極めた地域だ。市内を循環するバスのひとつに、「宝鉱山」行きが走っているのを見かけることもあり、私はなんとなく、宝は「宝鉱山」があるという認識が強かった。 本学の学生にとって都留市の行動範囲は、おもに大学周辺や富士急行線沿いに集中している。だから、富士急行線が敷かれていない宝や盛里は、都留市のなかでも滅多に足を運ばない未知な地域。そのため、宝で何か見つけたいと、おのずと興奮も高まっていた。「灯台もと暗し」 宝の玄関口ともいえる都留市金井で、印象深い出会いを果たしたのが桂けいりんじ林寺だ。宝に突入してすぐ、サボテンの花が咲く石垣を見つけて、写真を撮っていると「桂林寺に行かれるんですか」と近所のかたに声をかけられた。桂林寺とはなんだろうか。よくは知らなかったのだが、「あそこの睡蓮は綺麗だ」という一言が後押しとなり、お寺を目指してみた。 桂林寺では、野生のサルが出迎えてくれた。目が合うと境内周辺の木々へ逃げていく。追いかけてみると、ほかにも何頭かの姿を目視できた。そんな桂林寺でひときわ目を引くのは、やはり睡蓮の咲く池。縁側に腰掛けて、ゆっくりと境内の庭にある睡蓮を眺めることができる。ちょっとした観光名所だ。3年間、都留市にいたけれど知らなかった。山々からひょっこりとのぞく富士山の頂を眺めながら、小さな旅にどっぷりはまりこんだ。偶然の「都留市の再発見」も気分が高まる。まだまだ、見逃せない場所はあったなと嬉しくなった。        * 居住域の隅々が四方、山と川に囲まれた谷あいの世界。そういった地形により、周囲と一線を画していることが宝の特徴でもある。 本学から出発し宝に入るには、都留IC付近を起点とし、「宝鉱山」跡へと通じる県道(通称:宝バイパス)を目指すのが分かりやすい。宝の「背骨」のように走る宝バイパスは、大月市と結ぶ国道と接続されているため、決し1954年4月29日、旧谷やむら村町まち、宝たから村むら、盛もりさと里村むら、禾かせい生村むら、東ひがしかつらむら桂村が合併して、都留市が誕生した。「都留市の旧5町村を巡る」では、各地域を渡り歩き、気になる人やモノから、その地の風土を探っていく。2回目は、旧宝村全域を回ってみた。大学から近いのに、これまで出掛ける機会が少なかった宝を舞台に、風土を探るとはなにか、考えてみたい。﨑田史浩(社会学科4年 )=文・写真「金井」で見つけたサボテンの花「厚原」の農道から臨む宝の山々「大幡」に流れる大幡川の上流

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