FN74号
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25るため、案かかし山子を作ることに。竹を2本組んで服を着せ、頭に使わなくなった植木鉢をかぶせて、全長190㎝ほどの簡単なものを作って設置しました。 6月18日。案山子を設置してから1週間も間を置かず、また掘り返されてしまっていたので、この日にジャガイモをすべて収穫することにしました。案山子はどうやら効果がなかったようです。すべての株を鍬で掘り返してみると、数が少ないうえにまだまだ小粒なものばかり。「もっと育つのを待っていたかったなあ」と何度も思いながら、ジャガイモを拾います。私にとって、中屋敷でのジャガイモの初収穫は、嬉しい気持ちと悔しい気持ち畑の収穫  6月10日。一つ目の畑に植えたジャガイモが掘り返されていました。翌日、株の植え替えをすると同時に、一つ目の畑全体が写る場所にセンサーカメラを設置しました。 6月13日。畑に行くと、かなり掘り返されているようすを確認できました。植え直しをしましたが、株の多くは萎れていて、いかにも元気がないことがわかります。編集室に帰りセンサーカメラの写真を確認すると、ジャガイモを掘り返している動物の姿をとらえていました。写っていたのは一匹のニホンザル。この日、一緒に畑しごとをしている砂田君と相談した結果、「今度掘り返されたら、ひと思いに全部抜いてしまおう」ということになりました。 植え直しをしているときにいくつか収穫して持ち帰ったものをトースターで焼いて食べてみると、思っていたよりおいしくできていました。青かったり、虫に食われていたりすることもありません。あともう少し育てばおいしいジャガイモを収穫できる、と思うとわくわくします。そこでサルに少しでも対抗すが入り交じった、複雑な思いを抱かせるものとなりました。 ジャガイモの収穫を通して、いきものと向き合うというのは本当に気合いのいることなのだと実感しました。被害が出たときの対処法はいくつかありますが、その対処法をすべて試したからといって、求めた結果が出るとは限りません。何もかも初めてのことだったので、畑しごとを始めたときから、「うまくいかないかもしれない」と心配していましたが、じっさいにここまで育ててきたものが最後の収穫の段階でつまずいてしまうと、何ともいえない切なさや悔しさがこみ上げてきます。中屋敷はとくに、住宅地近くの田畑よりも野生のいきものの住すみか処に近い場所なので、今後もサルやイノシシと関わりながら作物を育てていくことになります。私はジャガイモの収穫を早めざるを得なかったことを「悔しい」と思いました。そのいっぽうで、センサーカメラに写ったサルを見て、いきものの存在を身近に感じ、心のどこかでわくわくしていました。野生との距離を測りながら畑を守っていくにはどうしたらいいのか、これからも考え続ける必要があるようです。センサーカメラがとらえた、ジャガイモを食べるニホンザル(6月13日)

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