FN74号
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27畑の外の収穫 6月26日。編集部の数名が、中屋敷フィールドでウメを採ってきました。畑を拓いたところから少し離れた場所にある果樹園には、ウメやプラムなどの木が多く生えています。また畑の近くにもウメやクワの木があり、ちょうど畑をサルに荒らされていたころに、こちらも収穫の最盛期を迎えていました。6月27日には編集部員数名がクワの木に登って実を食べているサルを目撃していたり、私も何回かクワの木の下にサルのものと思われるフンを見かけたりしていたので、いきものがクワなどの「木になる実」を求めて畑の近くに降りていることは明らかでした。ジャガイモを荒らされていたときにも、畑にクワの実が落ちていたので、クワの実を食べに来たサルが偶然に畑を見つけて、荒らしてしまったのかなあとも思えました。 今回採ったウメのうち、小粒なものはジャム、大粒なものは梅干しにすることにしました。ウメの加工品というと梅干しが代表的ですが、梅ジャムはあまり聞き覚えがありません。以前雑誌で見かけて作ってみたいと思ったこともあり、6月28日、編集部の香西さんと一緒にジャム作りにとりかかりました。インターネットで青梅を使ったジャムの作りかたを調べてみると、ウメは50度くらいのお湯でじっくりゆでていくと熟成が進んで黄色くなるとあります。本当なら時間をかけてゆっくり色を変えるものが小一時間で黄色く熟すなんて、にわかには信じがたい情報です。ウメが熟すのを待とうかとも話していたのですが、すでにいくつか傷み始めていたので、ゆでて熟成させる方法を試してみることに。 ていねいに洗ってなり口を取り、弱火で何度かゆでこぼします。すると、青梅の鮮やかな黄緑色が、黄色と橙色のあいだくらいの淡い色になりました。硬さもなくなり、指でつつくとふにゅっと、ちょっと力を入れればつぶせるくらいの柔らかさに。それから鍋に移し、つぶして種を取ってから砂糖と一緒にとろみがつくまで煮ます。ウメは酸味が強く、多めに砂糖を入れる必要があるので、少しずつ味を見ながら砂糖を足していきます。1600gにたいして600gほどの砂糖を入れると、ウメらしい酸味もありつつ、甘みもちょうどいいジャムに出来上がりました。 手をかけてきた畑での収穫はうまくいかないのに、とくに何か世話をしているわけではない果樹園や畑の近くの木からは、たくさんの収穫を得られます。畑では夏野菜もサルに食べられてしまいましたし、イノシシが畑の近くの地面を盛んに掘り返すようにもなりました。でも、畑にサルやイノシシなどのいきものが入り込んでくることは、少し考えると当然のことです。おそらくいきものにとって、食べ物がなる木があるこの中屋敷は、私たちが畑を拓く前から格好の食事の場だったのでしょう。私たちの畑も、新しい食事の場に見えているのかもしれません。 私たちは畑を拓いたり小屋を建てたりするとその場を「自分のもの」として、入ってくるいきものを敬遠しがちです。けれど、その場は本来いきものの住処であり、食事の場なのです。私たちが拓いた畑も、まわりで暮らす動物や植物の生活のなかに置かれているもので、あくまでその環境の一部です。小さな畑を通して、いきものたちの動きの大きな流れを感じとり、私なりに畑とそのまわりの自然とのつき合いかたを見出せるように、残りの半年間、畑へ通い続けます。

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