FN74号
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FIELD.NOTE32大学からの帰り道、ランドセルを背負い、習字道具を持って歩く女の子を見かけた。習字を習っているのかな。学校で書写の時間があったのかな。習字道具を持って歩く姿に、書道を習っていたころの自分を思い出した。都留にはどのような書道教室があるのだろう。書道教室̶̶慶明会私が訪ねたのは都留市立東桂小学校の付近にある 「書道研究 慶けいめいかい明会 東桂教室」。そこには書道を熱心に教える菊きくち地大たいけい慶さん(40)と、一生懸命に、筆を持って紙と向かい合うたくさんの子どもたちがいた。 菊地さんは東桂教室ほか4ヶ所の書道教室をいとなみ、幼児から大人まで幅広い世代に書道を教えている。その数約135名。曜日ごとに各教室をまわって指導をしているのだそうだ。指導方法は1枚ずつ提出された作品をていねいに添削していく。多くの箇所を一度に指摘するのではなく、一点一点を順に直していく。生徒は一回の稽古で上手に書けたと思える作品を20枚程度、菊地さんに添削してもらう。20枚の良いと思った作品を書くのにかかる時間は1時間15分ほど。この時間は、生徒が集中力を保つ我慢強さを鍛えるのにちょうどいい時間だという。慶明会を始めた10年前から変わらないスタイルなのだそう。展覧会活動については慶明会だけでの展覧会を年に一回おこなっている。ほかには全国規模の公募展に応募しているという。やる気スイッチを押す 東桂教室は東桂小学校に通っている生徒が多い。小学生ばかりの書道教室は騒がしくなってしまう。そこで、菊地さんは子どもたちの集中力ややる気の向上のためにさまざまな工夫を施している。 「毎月作っている冊子がありまして、『月刊書道誌』というんです。あと、生徒の作品のビフォーアフターを載せた別紙も作っています」。菊地さんは一冊の薄い冊子と別紙を見せてくださった。生徒たちの作品で埋まっていた。一人ひとりの精一杯の字。作品が冊子に載らないことがないように、半年ごとに載せる機会を作っているそう。別紙では一番最初に書いたものと一ヶ月後に書いたものが比較され、一目で上達したさまがわかる。 「生徒が春休みなどの休みに入ったら和紙漉すき体験など、他市でおこなわれる書に関連のある体験イベントに参加していますね」とも菊地さんはおっしゃった。体験イベントは生徒の書道への興味を高めさせると同時に、手先の器用さといったものも学べるのだという。生徒の励みになるような工夫の数々。菊地さんの、生徒に字が上三枝弥生(国文学科1年)=文・写真発見譚~書道教室を訪れて~菊地大慶さん(上)と一生懸命書道に取り組む生徒たち(左)7月4日撮影FIELD.NOTE

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