FN74号
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けど、ただそれだけじゃなくって、たとえば冬になると、日陰の田んぼへね、水を入れるわけ。そうすると夜10時ごろ一回入れて凍らせて、また夜なかに行って凍らせてって、子どもがするのよ。ね、そうすると氷がだんだん厚くなるでしょ? それで、田んぼでスケートができるわけ。そうするとね、その当時下駄のスケートだからね、下駄みたいなのに真ん中に歯がついた、それでこう、鼻緒がついて、それをこういうふうに紐でくくりつけるのね、そこで学校へ行く前に滑っていくの。ところがね、そういうことをね、水の番をしない人はね、仲間に入れないの。だからみんな子どもがその番をするわけ。だからその知恵ってのはすごいのよね。 そしてね、うちのすぐそばに、田んぼがあって、冬は二毛作だと、お米作って麦作るわけ。ところがね、麦を作らない田んぼがあるわけ、そうするとそこへ集まって子どもが草野球するわけ。ね、だけど田んぼっていうのはね、茶碗のかけらとか、ガラスとかそういうのが入ると危険なのね。なぜって田植えするときはだしでしょ。だからね、そこの田んぼの主がね、こう通る時に子どもがね、そういうふうに遊んでると、だめだーっていうの。そうすると子どもはぱぁーっと逃げちゃうの、蜘蛛の子散らすみたいに逃げちゃうのね、またそのおじさんがいなくなるとまたするの。そしたら今度おじさんがバラ線(有刺鉄線)を張ったの。でもバラ線って背の丈のね、こんな高さまで張らないからまたげば行けるわけ。で、こういうふうに、張っても張っても、どんなことしても子どもが遊ぶの。で、もうね、そのおじさんね、諦めちゃったのね。【田圃スケート場】「戦前は日当たりの悪い田圃を利用してスケート場がつくられ児童でにぎわった」。写真は、都留市谷村にある西願寺前の田んぼを撮影したもの。子どもたちは、遠藤さんの話に出てくる「下駄スケート」を履いている出典:『奥隆行写真コレクション』(本学フィールド・ミュージアム所蔵)イラスト:遠藤さんにガキ大将をイメージして描いていただいたそれでもうそのまま子どもが遊びたいように遊ばしてくれたの。そしたらちゃんと上に立つガキ大将がね、「お田植えが始まる前にみんな鍬をもってこい」っていって、みんなでその田んぼを耕して返すの。遊んで身につく「生きる力」 昔は親は全然子どもの遊びにはタッチしないから、子どもが、子どもの発想でそういうふうに、遊びがどんどん展開されるわけ。そうするとその遊びのなかから、学ぶものって社会性とか、自然との関わりとか、そういうものがみーんな学べたわけ。だから遊びってのはものすごく大切なのよ。っていうのは楽しくって、そしてそのなかから学べたんだから。「お勉強」なんて言わなくても、子どもっていうのはね、かなりほっとけばね、ものすごい知恵を働かせて、いろんなことができるの。それがいつかだんだん大人の枠に入って、規制されていくのね。
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