FN74号
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7ステンレス製のパイプに、熱したガラスを巻き取った後からは手を休めることは許されない。休めれば、溶けたガラスは垂れ下がってきてしまう。さらにその状態から風鈴の形にしていくのだ。「コップのほうが簡単だよ」と笑いながら白石さん。口の開き具合やガラスの厚み。音を生み出すものだけに、細かい部分にまで気を使う作業になる。作り始めると暑さのことは頭のなかから消え去った。前半の作業はほぼ自力で、後半はだいぶ白石さんに手伝ってもらって、なんとか風鈴の形ができた。風鈴は500℃に保たれた冷却用の窯に入れ、一晩かけてゆっくり冷ましていく。急いで冷ますとひずみができてしまうそうだ。「どんな音になってるかな」と白石さんに言われて、そうか、これは私が作り出した音なのか、と気付くと完成が待ちきれなくなった。耳を澄ますということ数日後、完成品が届いた。箱から取り出す。風鈴はちょっといびつな形に仕上がっていた。色も思っていたより薄い。でも手に持自分だけの音お話を伺った後、じっさいに風鈴を作らせてもらった。この日の大月市の最高気温は34℃。作業用の窯は1200℃に保たれていて、その周辺は約50℃だそうだ。あんなに涼しげな風鈴がこんなに暑い中で作られているんだ!と思いつつ、私は汗を拭った。さきに、作る過程を白石さんが一通り実演してくれたが、想像以上に難しそうだ。って揺らすとトゥイン、トゥインと丸みがかった楽しい音がしたから、見た目はこれで十分だ、と妙に大らかな気持ちになった。取材に行くまで風鈴の音はどれもチリンチリンだと私は思っていた。勝手にそう決めつけていた。今ならその時の自分がどれほど音に無関心だったのか分かる。耳を澄ましていると思っていても、じつはそれは「澄ましているつもり」だったのだ。手作りの風鈴の音を聞き、私は作ることを通して初めて耳の澄ましかたを知った。風鈴の音にはそれぞれの個性があること、聞く人が違えば同じ音も違うように聞こえることに気づくことができた。それで何かが大きく変わるわけではなくても、小さな音が聞こえてきたとき、誰かの話に耳を傾けるとき、きっとこの経験を思い出す。ガラスを熱する白石さん。ガラスはすぐに固まってしまうため、作業の合間に何度も窯に入れて熱し直される①熱したガラスを巻き取り、パイプに息を吹き込んで膨らます②模様となるガラスのつぶを巻き取る③ぬれた新聞紙を手に持ち、表面をととのえる④ひもを通す部分を作る⑤口の部分を広げ、ガラスの厚みも調整する〈風鈴作りの流れ〉〈完成〉届いた風鈴。ゆがみも愛嬌だろうか

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