FN75号
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FIELD.NOTEきのこを探して きのこは、簡単に見つかるものではない、と思い込んでいた。どうしてそう思い込んでいたのか不思議なもので、じっさいに山を歩いてみると、あちらこちらにきのこが生えている。アジサイの根元に、枯葉の隙間に、切り株に。生える場所も、その姿カタチもじつにさまざま。すっと伸びた柄えの上にゆるやかな曲線を描いたかさが開いている、というきのこのイメージとはかけ離れたものもある。まるで触手のような、鮮やかな赤色をしたベニナギナタタケ。目立つ色をしているのに、私はしばらく気がつくことができず、一緒に歩いていた砂すなだまさひろ田真宏君に教えてもらった。同じところを見ていても観ているものは違うことを実感する。 小学生のころに見つけた、あのきのこも見つけることができた。かさの部分が丸く、その中心には胞子を噴き出す穴が開いたホコリタケ。穴が開いているものは老菌で、幼菌は穴が開いていないということを図鑑で知った。今まで名前も知らずにいたけれど、知っているのと知らないのとでは何かが違う。ぼんやりとしていたものが鮮明になるような、景色のなかの一部でしかなかったものがその存在を主張しだすように見えてくる。見つけたからには、やっぱりかさの部分を人差し指と親指でつまんで押してみる。ぽふっと黄色い胞子が噴き出て、私を懐かしさと新鮮さの入り混じる気持ちにさせた。きのこの成長 綺麗な円錐型のかさに、それを支える太い柄。ツルタケダマシというきのこを見つけたのは10月13日のきのこ探索でのこと。これまでに見つけたきのことは比べものにならない、その大きさと立派な姿に胸が躍った。20㎝くらいはあるだろうか。かまぼこのようなさわり心地で、かさの表面はつるつるとしている。図鑑によるとこのツルタケダマシは毒きのこで、食べるつもりはなくても、毒があると知ったときはどきっとした。その周囲には、かさがボロボロになったタマゴタケが生えている。これは動物が食べたのかもしれない。ほかに、まるでニワトリの卵のようなツルタケダマシの幼菌がふたつ。この卵のような幼菌が、円錐型のかさを開いたきのこの姿になるようだ。そのようすを見てみたい。すぐさま、砂田君と一緒に定点カメラとセンサーカメラを取りつけて、タマゴタケを食べにくる動物と、ツルタケダマシの成長のようすを観察することにした。 2日後回収したセンサーカメラには、動物の姿が写っていた。タヌキくらいの大きさの動物(暗闇に光る目しか写っていないので判断できない)とシカだ。しかし、どちらもきのこを食べているようすはなかった。それでも、先日自分が立っていた場所に動物たちが来ているのだとわかったことで、野生の動物たちが私たちのすぐそばで生活しているという実感が湧く。 定点カメラは、30分単位でタイマーをセッきのこを見つけたい、そう思ったのは、小学生のころに見つけたきのこのことを思い出したからだった。かさの部分を人差し指と親指でつまんで押してみると、ぽふっと胞子を噴き出すのがおもしろくて、学校に持って行ったのを覚えている。あのきのこは何というきのこだったのだろう。ほかにはどんなきのこが生えているのだろう。きのこを探して本学美術棟の裏にある楽山公園を歩いてみた。ツルタケダマシの成長過程̶きのこから知る山のようす̶参考文献:今関六也・大谷吉雄・本郷次雄編著『山渓カラー名鑑 日本のきのこ』山と渓谷社/1988年10FIELD.NOTE
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