FN75号
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トしてツルタケダマシの成長のようすを写真に収めた。卵のような幼菌がぐいぐいと上に向かって伸び、じわじわとかさが大きく広がっていくさまはとても見事なものだった。あっという間に姿を変えて、跡形もなく消えてしまうきのこの成長過程を見ることなどなかなかない。自分で見つけたうえに、これを見ることが出来た私は幸運だ。山のようす 楽山公園を歩いてみると、きのこのほかにも気がつくことがあった。静かな山のなかで聞こえる音は鳥の声であったり、木の葉が落ちる音であったりする。はじめのうちはきのこを探すことに夢中で足元ばかり見ていた私も、山に入る回数を重ねるうちに山のようすを気にかける余裕が出てきた。 モグラが地中を進んだ跡を見つけることもあった。いつも同じように見える山の景色には違いがある。緑色ばかりだった木の葉のなかに赤や黄色が混ざり、道には落ち葉が増えていく。倒木や枯れ木などの、途絶えてしまった命を糧にして育つきのこたち。静かに、ゆっくりと山のようすは変わっていく。それは、何度も足を運んでこそ見えてくるものなのだろう。 見つけたきのこの名前やその特徴を知ることは容易なことではなかった。同じ種類のきのこでも幼菌と老菌では姿カタチがまるで違うものもあるし、とてもよく似たきのこもある。自分で撮った写真と図鑑では角度や場所の雰囲気によっても違って見えてくる。きのこを見極めるなら、きのこの成長過程における一つひとつの姿を知らないとだめなのかもしれない。 きのこを探して観察してみること。写真を撮影して図鑑と見比べてみること。そして知った、小さなきのこから見えてきた山のようす。見ているようで見えていないことが私の周りにはたくさんある。自分が意識してはじめて、見るから観るへと、ものを見つめる自分の姿勢が変わっていくのかもしれない。藤森美紀(社会学科4年)=文・写真❶❷❸❹❻❺1.ホコリタケの幼菌。未熟なものは全体的に白っぽい/2.ホコリタケの老菌。成熟すると灰褐色になる/3.おそらくエノキタケ。野生のエノキタケは市販されている白く細いものとは違う。ナメコにそっくりで判断がつかない/4.ブドウタケ。切り株に生えていた/5.ベニナギナタタケ。縦に割くと、なかは薄い赤色をしている/6.アカヤマタケ。かさには粘性がある。かわいらしいきのこ名前のわからなかったきのこたち。名前がわからないのは残念だが、かさのかたち、生えかたが本当にさまざまでおもしろい

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