FN75号
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12FIELD.NOTE富士急行線都留市駅方面から大学へと向かうとき、谷村にあるミュージアム都留の前を自転車でよく通りすぎる。そのたび、ここに勤める学芸員のかたがどういった仕事をしているのか、と気になっていた。 10月23日の午後、私はミュージアム都留をたずねた。入った先は落ち着いた雰囲気の漂うエントランスになっている。左手には木でできたカウンターの受付があった。 受付で用件を伝えると、しばらくして森もりや屋雅まさゆき幸さんが笑顔でいらっしゃった。森屋さんは都留市教育委員会で学びのまちつくり課、文化振興担当の主任を務めており、学芸員の仕事も兼任している。ミュージアム都留には7年前から勤務しているとのこと。勤務中でお忙しいにもかかわらず、森屋さんは私の質問にていねいに答えてくださった。仕事内容に迫る 学芸員のおもな仕事は資料の研究や調査などだが、それ以外にも展示や開催する行事の企画といった仕事も多くあるとのこと。 そのなかでまず最初にお聞きしたのは、資料の扱いかたについて。一言で資料と言っても、その種類は幅広い。それぞれに厳しいルールが決められているようだ。たとえば収蔵庫の温度や湿度管理の徹底。ほかにも金属に触れるさいに白手袋を着用することなど、さまざまな決まりがある。森屋さんは苦笑いをして「挙げだしたらきりがありませんよ」とおっしゃった。 展示の資料は都留市に縁ゆかりのあるものを選んでいるのだそう。コンセプトは『身近なもので地域を知ってもらいたい』であり、身の周りのものを題材にすることで、市民のかたに都留市へ目を向けてもらうためとのことだ。 やりがいを感じるのは、来場したかたから反応が返ってきたときや、自分たちの活動の輪が広がっているときだという。森屋さんが挙げてくれたのは、平成22年に開催された『ひな祭り展』だった。この企画は市内のかたに好評で、翌年には地域のかたや「つるし雛」を制作している団体と共同で展示をおこなうことになったという(本誌69号参照)。その後この企画に関わった人たちからさまざまな活動が生まれたのだそう。そのときに森屋さんは、ああ、私たちの展示がきっかけで多くの人々のつながりができ、活動が生まれたのだな、とやりがいを感じたという。私は学芸員がやりがいを感じるのは重大な発見をしたときや、資料と向き合っているときではないかと考えていたのだが、じっさいはそうとも限らないらしい。私が思う以上に、学芸員とは人と関わる仕事のようだ。求められる関わり「学芸員って言うと、資料の研究や管理のスキルが重要なのかなって思うでしょう。でも、「観る」。その言葉から私が連想したものは、博物館という施設だった。なぜなら私にとって「観る」とは、ものごとをじっくりと見つめることだからだ。博物館に勤務している学芸員という人は、私たちの「観る」場を支えてくれている。彼らはどんな仕事をしているのだろうか。「観る」を支える人ミュージアム都留の外観

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