FN75号
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FIELD.NOTE22 秋になるとビオトープにヤマガラがやってくる。小径を抜けるとき、コンコンコンコンコンと、激しく木をつつくような音が聞こえてくる。見ると、葉の陰にあかい胸をしたヤマガラがいる。穴を空けるのでも虫をとるのでもないようで、不思議に思っていた。 それが、今秋何度か見かけるうちに、エゴノキのタネと結びついた。タネを木の枝の上において両足ではさみ、そこで殻をつついて割っているのだ。ときどき落としてしまうこともある。 エゴノキの実の、白い果肉がはがれて茶色いタネがむきだしになったところへ、ヤマガラが来る。堅い殻のなかの、油脂を含む部分を食べるらしい。とは図鑑で知っていたけれど、これが音の正体だったとは。くちばしと足を使って(全身を使って全力で)、小さなタネから中身を取り出す、彼らの器用さ、一心さに目が離せない。考えてみると、彼らがどのようにしてタネを食べるのか、想像したこともなかったのだ。 今年の春先には、同じ木の根元にたくさん茶色いタネが落ちていて、いくひろいもの最終回日々ひろう。ひろいものがつなぐ縁。ひろいながら考えたこと。10月13日、本学附属図書館横ビオトープのエゴノキにて。ヤマガラが一心につついている/左:コーヒー豆大のエゴノキのタネ(4月24日)香西恵(社会学科4年)=文・写真ヤマガラとエゴノキFIELD.NOTE22

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