FN75号
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23つもひろったことがあった。そのとき、そのなかの割れた殻がヤマガラの食べたあとだと知ったけれど、このときは音を思い出すこともなかった。 一旦分かったつもりでいたことが、後になってほかのものとつながっていく。さらに周囲が見えてくる。音を初めて聞いたのは一昨年のことだったから、それから今まで見てきたもの、ひろったものが、ここでひとつにつながったのは、うれしかった。 * 10月2日のこと、大学の職員さんにスズメバチの巣をもらった。昨年、学生ホール横のモミジの木から採ったものだそう。ニスをかけて飾ってあり、大事にされていたようだった。それを、蜂の巣は悪いものを除けてくれるそうで「いいことがあるように」とくださったのだ。大事に持ち帰って編集室に飾った。 持ってみると、軽い。木の枝に接している部分はわずかで、もろく壊れやすい。うろこのようなものが重ねられているのかと思っていたけれど、表面は継ぎ目のようなものはなく、なめらかだ。どうしたらこのような模様ができるのだろう。 10月11日には、知人にカワラヒワの巣をもらった。学内のトチノキの近くに落ちていたという。カワラヒワは、春先のまだ寒い時期に巣をつくるので、巣材に羽毛や綿など、暖かい素材を使うそうだ。もらったものは枯れ草を編んだお椀形の巣で、たしかに枯れ草のあいだにもこもこした白いものが編み込まれて、暖かそうだった。 ひろいものはそのつくり手や持ち主について知りたくなる。考えてみれば、ひろいもの(おとしもの)を通じてその持ち主に関心を寄せてきた。鹿も木も虫も、鳥もそうだ。落ち葉や実、角、そして巣。ふだんは遠いそれらの持ち主と、そのおとしものが手元に届くことで出会える。手紙のようなものかもしれない。 いろんな人に素性を教えてもらいながら、届けてもらいながら、受け取ることのできるものが、少しずつ増えてきた。スズメバチの巣(左)とカワラヒワの巣(下)。カワラヒワは高い針葉樹に巣をつくるらしい。ひろったという周囲に針葉樹はないから、どこからか飛ばされてきたのだろうか。大きさ:外径11×10㎝、厚さ6㎝、内径5×5㎝、産座の深さ4㎝/スズメバチの巣は、枯れ木をけずって練り合わせたパルプを材料につくられているらしい。大きさ:17×13×13㎝巣をもらう23
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