FN75号
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35紙作り、手作り最終的には、原料を生かした自然の風合いを目や手で味わえるハガキを手に取りたいと思っていたけど、できあがったのは、見た目も手触りも、紙らしさに欠けるものになった。しかし、完成品は作りが粗いぶん、絡み合った繊維によってできているという、紙特有の構造をじっくりと理解できるものになった。手にすると、日常に溢れる、紙というあまり意識しなかったものに焦点を当てる貴重な機会を得たのだな、としみじみ思う。また、手作りという言葉に感じていた、ぽわっとしたあたたかみのようなものの正体に向き合うことができた。それは、時間と手間をかける情熱や、誰かに向けたまごころ、といった熱い思いや温かい気持ちから生まれているのかもしれないと感じた。その道のプロでなくても、「作りたい」「誰かに届けたい」といった思い一つで始められることは、手作りする側にとって、また手作りを受けとる側にとっても、魅力になっているように思う。きっとこれからも、できあがった不格好な紙は、そんな手作りの魅力を思い出させてくれるだろう。野草で 麻ひもで作った紙の作りに感動して、「こんなものでもできるのか」と思えるもので試したくなり、野草でやってみることにした。イネ科の植物が適している、という参考図書の記述や、植物に詳しいとお聞きしていた、本学初等教育学科非常勤講師の上うえの野健たけし先生のアドバイスをもとに、市内の川棚地区のあぜ道でエノコログサ、ススキ、チカラシバ、カゼクサを採集した。10月28日と11月11日の2度採集したのだが、2度目におこなったときは、野草が枯れかかっていた。黄みがかった野草は、見た目も手触りも藁わらに似ていて、本誌64号(18・19頁参照)にある藁を使った紙漉きの記事を思い出し、あんなふうに麻ひもより整ったものができるかも、と少し希望野草で漉いたもの。麻ひものものよりも薄く、粗い藁半紙のよう 完成品は、麻ひものものよりも、ぐっと紙らしくなった。煮込む時間を増やしたこと、たくさんたたいたこと、原料が異なること。要因はいろいろ考えられるけれど、自分なりの工夫の成果が目にみえて表れたのが嬉しかった。が湧いた。工程は麻ひものときと同様だが、煮込む時間を約2倍にするなど、繊維が細かく、柔らかくなるように、手順をところどころ工夫してみた。 印象的だったのは麻ひものときと匂いが違っていたことだった。米が炊きあがる直前のような、風味豊かな匂い。イネ科の植物であることと関係があるのだろうか。たたいたあとの原料。    (上)よくたたいたので、繊維を細かくほぐすことができた。(下)水に溶かすと、麻ひものときよりとろみ444があった採集した4種の野草を刻んだもの。藁に見立て、茎の部分を用いた参考文献:高岡昌江著『紙の大研究③ 紙をつくろう』 岩崎書店/2004年使用した野草。(左から)エノコログサ、カゼクサ、ススキ、チカラシバ

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