FN75号
44/48

FIELD.NOTE44わたし、都留に初めてきたとき「何もないところだ」って思ったんです。スーパー、山、大学……えーっ、それだけ!? って。でも、「つるたん」では、都留のまちを歩いていて見つけた「ちょっと変なもの」について地域のかたに話を聞いて、ていねいに調べてみたら、どれも3000字ぎっちり埋まるくらいのすごい秘密があって。何もないと思っても、歩み寄ってきちんと見てみれば、なんでもあるんだな、と。そういう見方というか、ものごとに対する姿勢を身につけられたのはすごく大きかったなと思っています。 あと、編集部では編集のことだけでなく、本当にたくさんの経験をしたので、自分のなかの基準……基準っていっていいのかな、基準になっている部分があって。たとえば、スーパーで梅が並んでいるのを見たら、都留でも梅仕事をしたなとか、梅の甘漬けづくりは塩揉みの作業が一番大事なんだよな、とか。そういうふうに、折に触れて都留での経験を思い出すんですよね。自然に結びつくというか。前田:たしかにそれはあるかも。絶対に編集部にいなければカラスを見て感動することもなかっただろうし。杉山:羽が落ちているのを見たら、高瀬さん(編集部OG)が拾ってたな、この羽はどの部分の羽かなと思ったり。都留での経験が本当に濃かったんですよね。「基準」というか、「原点」と表現するほうが合ってるかも。前田:『フィールド・ノート』をつくったおかげで、ちょっとのことでは動揺しなくなりましたね。杉山:そうですよね! 生きる力のようなものを鍛えられた気がします。味噌もつくったし。前田:薪割りもしたし。杉山:どんと構えていられる部分はありますね。今井:ぼくは1年生、2年生のうちにもっとこうしていったらいいのになとか、こういう雑誌にしていったらいいのにとか思ったら、変えていっていいと思うんですよ。『フィールド・ノート』のバックナンバーをずらっと並べると、どんどん形が変わっているのがわかるように、たぶん今の最新号が最終形じゃないかと思うから、どんどん新しくしていっていいんじゃないかなって思うんですよね。インタビューを終えて 今回、大先輩にお会いするということでとても緊張しました。しかしお話をしていくうちに、私が入る以前の編集部のようすなどを知ることができ、緊張よりももっとお話を聞きたいという気持ちでいっぱいになりました。 先輩方は都留を舞台にいろいろなことに挑戦していました。そして、その経験が自分の生きかたのなかで、かけがえのないものとして心のなかに残っているようでした。スタートを切る経験や人に揉まれたこと、ものの見方が変わったこと。積み重ねてきた経験のなかで先輩方が感じたことを私も活動を通して感じることが多くあります。 『フィールド・ノート』をつくることは雑誌をただつくるだけでなく、自分の生きかたの土台をつくることにも通じていると思います。編集部での経験が将来にわたって私のなかで生きていくだろうと、先輩方の姿をみて強く感じました。FIELD.NOTE44

元のページ  ../index.html#44

このブックを見る