FN76号
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FIELD.NOTE自然科学棟の西側外階段の隅に集まるナミテントウ(2013.1.11)18 岩の割れ目や落ち葉の下にいるたくさんのナミテントウ。黒いものや赤いもの、翅の紋の数もさまざまだ。図鑑などでよく目にしていた光景を思い出す。ナミテントウは、集団で越冬するテントウムシとして知られている。あんなにたくさん、どうして同じ場所に集まってくるのだろう。なんで群れるのだろう。子どものころから疑問は尽きなかった。 10月下旬の秋晴れの日。自然科学棟の下で少し顔を上げてあたりを見まわす。黒やオレンジ色の小さな虫が数匹飛んでいる。うわさは本当だったようだ。棟の西側外階段で、集団がつくられる過程を毎日観察していくことにした。 飛んできたナミテントウたちは、1匹で歩きまわったり、とまったりしていた。どうやら群れるには時間がかかるみたいだ。数匹が寄り添ってじっとしているのを確認したのは、やっと一週間が過ぎた11月初旬からだった。この2〜4匹ほどの小さな集団が大集団になっていくなんて、集まるきっかけはいったい何なのだろう。 一度群れたナミテントウは移動せずに、そこにじっとしているものだと思っていた。新しいナミテントウが次々とやって来て、大集団になる。そういうものだろうと思って観察していた。でも、じっさいに見ていると、意外にも歩きまわっているナミテントウが多いことに気づく。ほとんど毎日取りためた観察の記録からは、おもしろいことが見えてきた。 集まることと離れることをくり返しながら、集団はだんだんと大きくなっていったのだ。気温が低いと集団は大きくなり、気温が高いと小さくなる。また、雨が降ると集団が小さくなる傾向も見られた。環境に対応して、あるいは影響を受けて行動しているとすれば驚きだ。 野外でも越冬している集団はいないかと、木の幹を見てまわっていた。ふと目をとめると、4㎜ほどの小さなテントウムシがとまっている。見慣れた赤い2つの紋と黒い体色から、ナミテントウだと思った。ふだん見ているものに比べたら、たった2分の1ほどの大きさだ。こんなに小さいのが1匹で越冬して「テントウムシは漢字で書くと“天道虫”」小学生のころに、先生が教えてくれた。植物の茎を上へ上へとつたい、てっぺんから飛び立つ、天への道を知る虫なのだと──。本学の自然科学棟は、毎年テントウムシたちの越冬場所になっているらしい。わざわざ探しに行かなくても見られる。しかも大量に集まってくるなんて、これはテントウムシをよく知るチャンスだ。鈴木陽花(初等教育学科3年)=文・写真・イラストFIELD.NOTE

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