FN76号
30/48

FIELD.NOTE30すっきりしない出会い 8月10日20時、近くの屋内から観察を試みます。窓を隔てて、食事場までの距離はおよそ7mほどです。赤いセロハンを貼ったライトで照らします。 20時32分、その赤い光のなかに一匹のアカネズミが手前から入ってきました。一度、食事場の木箱の後ろに隠れます。一周して左側から顔を出し、箱のなかに入りヒマワリの種を食べました。もっと近くで見たくてこちらが動いても慌てるそぶりは見せません。20分ほど食事をしたのち、奥に広がる森のなかへと姿を消しました。 8月20日、同じ屋内から観察を試みたところ、今度は窓ガラスを挟んだ縁側においた木の箱に、いつの間にか身を置いてヒマワリの種を食べるアカネズミを観察することができました。ちょうど21時頃になろうかというころです。 この時は、キャンプに来た地域の小学生15名ほどと、木の床をギシギシと音をたてて寝そべりながらアカネズミを待っていました。アカネズミと子どもたちの距離は、窓ガラスを挟んでいるとはいえ、30㎝ほど。ひとめ見るのに苦労したアカネズミがなぜ、この時はこうも間近に姿を見せたのか。いまだに解けぬ謎となっています。意外と大胆 2月中旬、観察を試みた同じ屋内に置かれたアクリル箱に野ネズミが訪れることのできるエンカウンタースペース(出会いの場)をつくりました。一本のパイプでアクリル箱と屋外はつながれています。アクリル箱の大きさは野外で用いた木の箱と同じくらいです。高さは1㎝ほど高くなりました。 ちょっと立ち上がって手を伸ばせば、天井に手が届く狭さのこの空間は、野ネズミも気に入ったようです。あるアカネズミは、パイプから顔をだして一瞬とまるようなしぐさを見せたあと、ゆっくりと身を乗り出し、こちらに丸い背を向けて食事を始めました。まるでここが慣れ親しんだ場所であるかのような落ち着きです。糞をしながらヒマワリの種を食べています。さらに顔ほどの大きさのオニグルミを持ち去るほどの大胆さです。時間をかけてオニグルミに穴をあけてみせるほどの余裕はまだない、というとらえかたもできそうです。 また、こちらが少し動いてしまうと外への出口となるパイプに急いで両手をかけ、いつでも逃げることができる姿勢をとります。耳を動かしながらようすをうかがい、その後、音がしたほうにからだを向けて食事を再開しました。こまやかに見ている 冬、餌台にやってくるヤマガラは、窓を介していれば人間が50㎝ほどの距離にいても安心してヒマワリの種を食べています。アカネズミと同じような「ここまでなら大丈夫」という「賢さ」ともいえるようなふるまいです。アカネズとともに、このヤマガラも気になるようになりました。手にヒマワリの種を置いてじっと待ってみるとヤマガラはどう応えるか、ふと試してみたくなりました。 12月26日、なるべくヤマガラと目を合わせないように、気をつけながら待ちました。顔を上げなくても、近くであたりをうかがうヤマガラが近づいてくるようすは、その羽の音から知ることができます。スズメほどの大きさの小鳥であっても、力強くて低い羽の音屋外と屋内をパイプでつないだエンカウンタースペースFIELD.NOTE30

元のページ  ../index.html#30

このブックを見る