FN76号
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FIELD.NOTE̶広がってゆくもの̶染め物の話っていうけれど、私がはじめから染め物をね、しようとしたわけじゃないからね。着物のね、リフォームなんだけど。で、それを解いていると着物の裏って、こういうの「胴どううら裏」っていうのね。で、こうゆうふうに(胴裏に広がった薄黄色の点々を示しながら)汚くなっちゃうの。これはね、もとは白いものなの。真っ白が古くなって年数がたつと、色が黄色くなったり、茶色いこういうシミが出たりするのね。だけど、この胴裏自体はね、正絹なのよ、シルクなの。そうするとね、ふつうね「ああもうこれ、汚いから使えない」って捨ててしまったりするのね。だけど私はそんな無駄にしてはもったいないと思って、そしてなんか方法はないかなって、そしてこれを染めたらどうかなって思ったの。それで一番先に染めたのは玉ねぎの皮。白いものでも玉ねぎの皮の色で染めると、たとえばこうゆうふうに襟の汚れている部分が分からなくなるじゃない、おなじような色だから。 4年前に私の畑にね、これ(藍の種)を蒔いたの。そうしていっぱーい出てきたのね。どうもこの花を見るとタデ科みたいな感じ。で、この葉っぱをちょうどね、7月の終わりから8月ね。ちょうどいちばーん威勢がいいとき。そんとき葉っぱを摘んだの。はじめはね、水のなかに入れてね、夢中で揉んだの。そうして汁を出したの。それで染めたのよ。そしたらね「いやあ、こんなことする必要ないな」と思ったの。手で揉むってものすごく暇ひまがかかること。で、ミキサーにかけたの、お水入れて。そうしてその汁にこの白い布を入れたわけ。ほんとにこう、浸しただけ。(水色の染め物を広げつつ)そしたらこういう染めができたわけ。 こないだ(ミュージアム都留にて開かれた遠藤さんの個展『和服リフォーム展』。平成25年1月4日〜17日にかけて開催された)一着黄色いのであったでしょ。あれは紅花でね、おととし紅花の種を貰ったから、畑に蒔いたの。で、うちの畑にぞーっとね、芽がいっぱい出てきたの。そしたらどれが紅花なのかわからないの。それでね、おなじような芽があるから「これが紅花だろう」って思ってそれを残して、あとみんな摘んじゃったの。そしたらその葉っぱが大きくなったらば、うちの弟が見て「これ、ただの雑草だよ」って。そしてその年は失敗なの。 それで去年2回目に種蒔いて、よーく見たの。この前はこれが雑草だったから、今度こっちがそうなんだなって。それで去年は紅花が成功してね。で、ちょっと本読んだら、紅花も藍とおなじように、熱を加えて発酵させてしばらく置いて、ってね、難しいことが書いてあったの。それで私は、いいや、そんな机の上に広げられた色とりどりの布̶̶。「ね、これ触ってみて。すごーくね、柔らかくてね、いい感じね、このシルクの感じが」。遠藤静江さん(80)の瞳がきらりと輝きます。今回は、遠藤さんが和服リフォームをきっかけにはじめた「染色」についてのお話です。タイトル下の写真は、遠藤さん宅に飾られている紅花のドライフラワー42FIELD.NOTE
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