FN76号
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FIELD.NOTE88 夜、ガラス張りの窓の向こうに並んでいる社が目を引く。アルバイトからの帰り道、そこを通るたびについ視線がいく佐藤木工。社をつくる人が身近にいると知ったとき、どんな人が、どういう想いで社をつくるのか社をつくる人お聞きしたいと思った。先祖代々お稲荷さんを祀る人もいれば、その社をつくる人もいるのだ。 佐藤木工は鹿留交差点のすぐそばにある。ガラス窓の隣にある引き戸を開けると、佐さとうけいいちろう藤恵一郎さん(45)が迎えてくださり、奥のほうから佐藤さんのお母さんも出てきてくださった。木の机に、木の椅子。置かれた箪たんす笥は重厚感を、並んだ社は優しい木の色をそのままに、屋根が光を反射して存在感を放っている。お話を聞かせていただいたその部屋は、手づくりの「木」に囲まれていた。 佐藤さんは佐藤木工三代目。小さいころから木に触れ、ごく自然な流れのなかでこの仕事を継いだという。だから技術についても「教えてもらうという感覚があまりないんですけどね」と佐藤さん。お父さんの代には職人さんが何人かいて、その技を見て自分で覚えたそうだ。「みんなそうだと思いますよ、この世界は」。「教えてもらうんじゃなくって覚えるといった方が正しいですね」。 わからないことは自分で勉強し、修理をするときにはその当時の職人さんの隠された技術を学ぶ。人はきっと見様見真似でたいていのことはできるし、そこから自分で工夫して上達していくことができるのだ。けれど、教えられる勉強に慣れきってしまえば、それがまるで当たり前のようになってしまうとあらためて考えさせられた。 私が見つけたお稲荷さんはほとんどが木でできた社だったけれど、なかには石でできたものもあった。木でつくるということの意味をお聞きすると、「石ってやっぱり絶対的なもので、変化がないですよね」と答えてくださった。お稲荷さんなどの「屋敷神さん」は、代々受け継がれてきたものを古くなるたびに少しずつ大きくしていき、それが家の繁栄を願う習わしだそうだ。木はやがて朽ちる。その変化について、朽ちていくさまを愛でる文化が日本に窓から社が見える。さまざまなかたちの木がたくさん置かれているはあるとおっしゃっていた。佐藤さんの仕事 佐藤さんはいただいた仕事以上のものを提供するという想いを一貫してもっておられる。「強いて言えばちょっとこう、理屈っぽくなるけど、精神性ですかね」。強い気持ち、心構え、気持ちを込めるといった精神的なことを大切にしている。やはり佐藤さんはその道のプロであり、職人としての誇りと人間としての芯があると感じた。佐藤さんのつくる社や家具が重厚感や存在感を放つのは、その想いが染み出ているからなのだろう。木に対する愛着とその知識の深さを、置いてある作品やお話の端々から感じた。一本の無垢のケヤキの木から木目をいかに美しく表現できるか、それが佐藤木工の仕事だとおっしゃる。今、そこまでこだわってできているものが少ないそうだ。FIELD.NOTE8
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