FN77号
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no. 77 Jun. 201314地図で民話を紐解けば十日市場から夏狩にかけてはいくつかの民話が残っている。そのなかでひとつだけ、調べてみても舞台がはっきりしないお話があった。「早乙女塚」の物語だ。私は夏狩の地図を用意し、早乙女塚を探しに行こうと決めた。              深澤加奈(国文学科3年)=文・写真早乙女塚 夏狩の長者の家には、20人の早乙女が植えても3日はかかるほどたくさんの田があった。ずば抜けて田植えの早い娘がいたので、長者は冗談まじりに「明日一番大きな田を一人で植えたなら、その田を付けて嫁の世話をしてやろう」と言った。 翌朝空が白み始めると、もう田で働く娘の姿があった。昼食もそこそこに働くその姿を見た長者は、たとえ植え切らなくても約束を果たそうと決めた。日が沈むと同時に田を植え終えた娘は、畦に座り手を合わせた。だがそのまま動かないので、人々が心配して近寄ると、息は無かった。みな娘をあわれみ、塚を作って供養した。参考『郡内の民話』なまよみ出版

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