FN77号
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no. 77 Jun. 201318絵図の存在を知ったのは昨年の春先。本学の卒業生で、そのころ古渡の梅農家を取材していた﨑田史浩さんが、古渡自治会館で古い地図を見てきたと話してくれた。写真を見せてもらうと、色彩豊かな画中に「十日市場」や「夏狩」など見覚えのある字面が顔をそろえている。しばし、目を凝らして写真に見入っていた。あれから一年、ようやく自分も見に行ける機会を得ることができた。内容自体とても興味深かったけれど、それ以上に間近で古いものを観察できるという期待のほうが、現地に向かう私の背中をより強く押したのだった。 3月26日、夕方5時に大学を出発。﨑田さんに先導してもらい、スクーターで古渡を目指す。頬と手をかすめる夕方の風はまだまだ冷たい。国道139号線から、案内標識に従って脇道へ降り、「早はやさく作の石仏群」を横目に見ながら、鹿留川に沿って上流のほうへ走っていく。途中、古渡橋という橋を渡って集落に入り、大屋根がひしめく民家のあいだを右左折して進んでいくと、目的地の古渡自治会館が見えてきた。見聞ノート古渡に伝わる絵図

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