FN77号
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no. 77 Jun. 201332砂田真宏(初等教育学科4年)=文・写真・図つるりんの全景(2013.4.7)林床に咲く植物(左から)セントウソウ、タチツボスミレ、クサノオウ、ニョイスミレ。ほかにオオイヌノフグリ、ヒメオドリコソウなどが見られる。図鑑をめくっては少しずつ名前を覚えた 足元に目をやるとセントウソウの白く小さな花が林床の大部分を覆っている。その間を埋めるようにしてタチツボスミレやクサノオウ、ヒメオドリコソウの花が顔を出す。アブの仲間はその蜜を吸うために忙しそうに飛び回っている。今年は少し足早に春がやってきた。でもじっくり見てみると春のつるりんのようすはなんだかいつもと違っていた。 つるりんは南北に14m、 東西に70mほどの細長い林で、ちょうど1号館の西側半分と隣り合っている。林の西側には針葉樹がいくつかあり、東側は落葉広葉樹が分布する。そして林の真ん中に池がある。この池も人工的につくられたもので、直径が2mほどの丸い形をしている。この林に生えている樹木や草花の多くはキャンパスの周辺で見られるものばかりだ。そんな林内は賑やかなキャンパスとは対照的に人通りは少ない。ここへは1年生の時からときどき足を運んでいる。生きものを見つけると写真を撮ったり、図鑑で調べたりを繰り返す。生きものの名前や花の咲く時期が少しずつ分かるようになってきた。ヤマアカガエルの産卵 林の真ん中の小さな池。池と言っても少し大きな水たまりのようなもので、水深は25〜30㎝ほどしかない。以前からこの池には2月ころになるとヤマアカガエルが産卵に訪れている。少なくともここ3年は毎年やってきていた。ヤマアカガエルはつるりんの生きもののなかでも早くに冬から目を覚ます(産卵をしたらまた冬眠をするそうだ)。 はじめてそれがヤマアカガエルであると知った年はオタマジャクシを、その次の年はもうすぐオタマジャクシが出てきそうな状態の卵塊を見ることができた。断片的につるりんのヤマアカガエルの成長は見てきたけれど、産卵から順を追って成長のようすを見たことがない。今年つるりん。この愛らしい名前の正体はキャンパスにある小さな林のことだ。グラウンドと1号館に挟まれている林を「つるりん」の愛称で呼んでいる。この林は今から40数年前に大学の教員や職員によって植林されてつくられたそうだ。1年間、このつるりんとそこに暮らす生きものたちを見続ける。春つるりん

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