FN77号
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33右写真 ヤマアカガエルの卵塊。大きさはどんぶり一杯ほど。小さな池のなかに3つの卵塊を見つけた(2013.4.5)左写真 水面に顔を出すヤマアカガエル。少しでも音を立てると水中の落ち葉の下に隠れてしばらく出てこない(2013.4.7)つるりんの略地図(2012年生物学実験 毎木調査の結果より作成)図中の円で示したのが樹木。円の大きさは樹木の直径に比例させた。1マスは2m×2m。西側には針葉樹が、東側には落葉広葉樹が分布する。真ん中あたりに池がある。樹木は少なくとも51種類133個体。数字で見ると林の構成が客観的に見えてくるこそは産みつけられたばかりの卵塊とその成長を見ておきたくて、例年卵塊が見つかる2月から池へと通うことにした。意図しない出会い  2月の林はまだ静まり返っている。3月まで数日おきに通い続けたが、卵塊が見つからない。もうまわりの草花はすっかり春の装いへと変わってしまった。原因は分かっている。今年はまとまった雨が無く、池に水がほとんどなかったのだ。これでは産卵できない。池に水が溜まらないままとうとう4月になってしまった。 今年は来なかったか、そう思い始めたころだった。4月3日、2日間のまとまった雨が止み、心地の良い日差しの降るなか、彼らはいつもより2ヶ月遅れてやってきた。ヤマアカガエルを探すつもりはなくつるりんに足を運んだときだったから、うれしい反面いつもと違うようすに戸惑う。今まで順調そうに生きているヤマアカガエルのようすしか見てこなかったし、それが当たり前にあるのだと思っていたことに気づいた。3年間のしかも断片的な情報から考える生きものの暮らしのようすはまだその一部に過ぎない。毎年同じようで、林もそこに暮らす生きものも少しずつ変化していく。3年の時間と今年の春ていねいに見ようとしたことでその小さな変化に気づくことができた。これまでも大学の裏山や中屋敷フィールドなどで、たくさんの生きものとの出会いがあった。では、私たちの身近な場所、キャンパス内にはどんな生きものたちが暮らしているのだろうか。今まで断片的にしか見てこなかったつるりんの生きものたちのようすを1年間見続けてみたい。気づけばつるりんの林冠にはハリエンジュの白い花が存在感をましている。いよいよ夏も本番だ。グラウンド1号館池針葉樹70m14m0m

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