FN77号
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no. 77 Jun. 201334春の一杯地中の広がり タンポポコーヒーは、タンポポの根を材料にして作られる。4月14日、タンポポの根を収穫するために中屋敷フィールドへ足を運んだ。タンポポが群生している小屋の周りに目星をつける。タンポポ以外の雑草も、シャベルの邪魔をするかのようにたくさん生えている。地表のみならず、地中でも互いに絡み合うようにしてそれぞれが根を伸ばす。途中でどれがどの根なのか分からなくなることもたびたびだ。隣で同じようにシャベルをふるう鈴木さんの、そのまた向こうにある植物の根が横切って遮るなんてことも。地中では予想もし得ない広がりがあるのだ。作業の邪た。火にかけた瞬間から、こうばしくて良い香りが広がる。深く息を吸い込む。何の匂いだろう。嗅いだことがあるような……。麦茶やほうじ茶に似ているようで、でも少し違った香りだ。 煎り始めて15分ほどで、根がフライパンの上を転がる音が変わり始めた。少しこもったコロコロという音から、水分が飛んで軽やかなカラカラという音になる。強火にして一気に水気を飛ばしたくても、焦げてしまうからぐっと我慢する。色は黄土色から焦げ茶へとじんわり変わっていった。そのあとミキサーで粉末にして下準備が整う。焦げ茶だった根はきな粉のような色になった。これで本当にコーヒーのようになるのだろうか。 フィルターを通してマグカップへ注ぐ。お湯をかけたとたん、根の粉末は濃い茶色にさっと変わった。春をもっと満喫したい。春といえばタンポポの花。タンポポで思いついたのはタンポポコーヒーだ。存在は知っているけれど挑戦したことはない。飲んだことのない春の味、満喫してみよう。▶掘り出したなかで最長のタンポポ。根の長さはちょうど50cm別符沙都樹(国文学科2年)=文・写真─タンポポコーヒーを味わう─魔だなあと思う反面、その生きるための強さに尊敬の念すら抱いた。 タンポポの根は1mを 超えるものもあるという。このまま掘っていけば、もしかしたらそんな長さが見られるかもしれない。そうは思っても、さすがに1m も掘っていたら日が暮れてしまう。根が細くなったところでちぎり、次の株に取り掛かった。 1時間ほどで計13本の根を収穫した。全身砂まみれだ。その場で根についた土をあらかた洗い流す。帰ってから再度ていねいに洗いなおし、風通しの良いところで乾燥させた。課題は灰あく汁 4月17日、乾燥させた根はパリパリになっている。拍子抜けするほど簡単に折れた。地中から出たばかりの時のしなやかさはない。 根を1㎝ほどに細かくして焙煎し

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