FN78号
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no. 78 Aug. 201312クワの実。黒く熟したものを採る。合計400gの収穫があった(2013.6.6)できあがったクワの実ジャム(2013.6.6)都留に引っ越してきて、散歩中に見かけた真っ黒いクワの実。「クワ」というと、小学生のころ、背伸びしながら採って食べたことを思い出す。こんなにたくさんの実がなっているのならば、ジャムにすることだってできるかもしれない。今は身長が伸びて、高いところの実にも手が届くようになったのだから、小学生のときよりもたくさんの実が採れるはずだ。そう思って、クワの実を採りに行くことにした。 富士急行線 禾生駅を過ぎたあたり、国道139号線沿いの2本のクワの木から、いちごパックにこんもり盛れるくらいの実を収穫した。生のままの実を食べてみると、甘酸っぱいものもあれば、少し渋味の残るものもあった。帰宅後、ジャムにしようと砂糖を加えて火にかける。白い鍋と、ジャムをかき混ぜるゴムべらを鮮やかな紫色にそめて、甘い匂いのする赤紫色のジャムは完成した。できたての熱いジャムをひとさじ舐めてみる。ふわりと甘酸っぱい味が広がった。 後日、クワの実ジャムを使ってムースを作った。ムースの生地のなかにジャムを混ぜ込んでみよう、と思いついたからだ。冷やし固めるため、容器に流し込んだ薄紫色の生地を冷蔵庫に入れる。およそ2時間後、そろそろ固まったかなと冷蔵庫を開けて驚いた。ムースは、パステルブルーの色に仕上がっていたのだ。その色にびっくりしながらも、どんな味になったのだろうかと恐るおそる味見してみる。ひんやりとして甘い。口の中にかすかな酸っぱさが残った。ジャムのときとは色がずいぶん変わってしまったけれど、やはりク森本楓(社会学科1年)=文・写真金原由佳(社会学科1年)=写真ワの実の甘酸っぱい味がする。 真っ黒な実が赤紫色のジャムに。赤紫色のジャムがパステルブルーのムースに。甘酸っぱい味は残したまま、クワの実はその色をくるくると変えていく。手を加えていくたび、クワの実は新しい色を紡いでいった。ほかのカタチになれば、クワの実はもっと違う色も紡ぐのだろう。今回、クワの実が紡ぎ出す新しい色をじっさいに見ることが楽しかった。もっと新しい色の変化も見てみたい、自分が新しい色の紡ぎ手になれたらな、と思うのだ。 クワの実ジャムを使ったムース(2013.7.29)クワの実が紡ぎ出す色

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