FN78号
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19 富士急行線 都留市駅のほど近く、国道139号線沿いにすがや製菓店はある。6月26日の午後、お店に足を運んだ私を出迎えてくださったのは、5代目店主の菅すがやけんいちろう谷賢一郎さん(44)。私の言葉に、うんうん、と明るく頷いてくださる。「職人さん」という響きから眼光の鋭い人を想像していたけれど、私の勝手な思い込みだったようだ。 まあまあ、とにかく工こうば場へどうぞ、と奥に案内される。暖のれん簾をくぐり抜けた先には、売り場よりも広い空間が広がっていて驚いた。正面にはステンレス製の大きな作業台が縦に二つ並び、右手と正面奥には引き戸で仕切られた小さめの部屋がある。左手の部屋には、何やら機械類が置かれているようだ。お店のかたがたがすれ違いざまにあいさつしてくださる。現在お店は、ご家族のかた5人とパートのかた4人で切り盛りなさっているそう。作業台のまえに立ち、竹べらで最もなか中に餡子を手ぎわよく詰めているのは、奥さんの晶あきこ子さん(43)。私に気がつくと顔を上げ「いらっしゃい」と笑顔で声を掛けてくださった。 賢一郎さんは、砂糖入れに使っている屋号が書かれた木箱や羊ようかん羹包丁、落らくがん雁の型や木べらなど、いろいろな道具を出してきては私に見せてくれる。そのあいだにも、暖簾の向こうの店内には、入れかわり立ちかわりお客さんが訪れているようだ。お店のかたがたのあいだでは「最中あと10個詰めて」などと声が飛び交う。賢一郎さんも餡子の仕込みの続きをするということで、その作業を見せていただくことにした。すがやの餡子 すがやさんでは小豆の皮を取り除くことで、えぐみのない餡子を作るそうだ。まず大きな鉄鍋で小豆を煮て、瞬間的に皮をぱっと膨らませる。それを足で踏み、ざるに揚げて水で流すと大まかに皮が剝ける。それをもう一度煮てざるに揚げると、二度目の皮剝きの完了だという。ここまでの作業は私が来るまえに終わっていたので、その続きの作業である皮剝きの仕上げから見せていただいた。木製の桶に布袋を取り付け、すがやさんのなかでは「おとし」と呼んでいるふるいに小豆を流し込み、手でこしていく。すると皮だけがおとしに残り、袋のなかに小豆の中身が集まるようになっている。ショーケースには八端最中や、かりんとう饅頭が並ぶ。店内にはお客さんが腰掛けられる椅子もあり、暖簾の奥は工場になっている最中に餡子を詰める晶子さん(右)と賢一郎さん(左)

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