FN78号
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no. 78 Aug. 201326さん同士で気遣って時間をずらそうとするものの、結局みんな同じことを考えるからなのか、来る時間が重なってしまうのだという。昼前が混むこともあれば、昼過ぎが混むこともある。これは何度も「ほたる」に足を運んでいる地元の常連の人が多いから起きることだろう。なぜ「ほたる」なのかうどんを食べながら、どうして「ほたる」という店名にしたのかを伺った。この周りでホタルが舞うから、ホタルがいる場所だっていうとお店の場所が分かりやすいだろうからという答えがお二人から返ってきた。ホタルが舞うこの夏場の時季だけ「ほたる」は夜にも営業する。ホタルを守るために、直接川に流すわけではないが揚げものを作るのは控え、食器を洗うときは洗剤を極力薄めて使う配慮をしているそう。強い明かりがそとに漏れてホタルに影響しないように、窓に厚手のカーテンをしてそっと営業している。後日、ホタルを見に行ったさいにそとから見た店内のカーテン越しの光は、真っ暗闇のなかで優しく光って見えた。主張するわけでもなく、山奥で静かに営んでいる「ほたる」。まさにホタルらしいお店のたたずまいだ。ホタルが見られるからという理由で名前を付けたにしても、つくづくぴったりな店名だなあと思う。壁一面の写真 話は自然と入ったときからずっと気になっていた、壁一面に飾られている写真のことになった。ゲンジボタルやリスの写真、「ほたる」の店先に咲くサンショウバラ。これらはみんな知り合いの人にもらったものだという。ぜひ飾って欲しいと置いていったのだそう。「ありがたいことに、みんなそういうふうにね、好意で。そのまんまになっていますけれど、増えることはなくて、みんなもう目一杯なので」と奥さん。たしかにところ狭しと並んでいて、これ以上は飾るのが難しそうだ。 数々の写真の下側には、作者や撮影者の名前が一枚一枚手書きで貼ってある。なかで上:ゲンジボタルのサナギの写真左:写真以外に、布はり絵なども飾ってある

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