FN78号
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no. 78 Aug. 201332砂田真宏(初等教育学科4年)=文・写真季節は夏。夏は昆虫採集だ、とつるりんに出かけてみたものの昆虫が見つからない。一体どこにいるのだろうか。うっそうと茂る夏のつるりんで生きものの姿を探した。夏つるりんうっそうと茂るつるりん。ただ歩くだけでは生きものの姿は見つからない梅雨に入り雨の合間をぬってつるりんに通う。林内を歩く。少し歩いただけなのに下草についた雨水で靴はびしょ濡れだ。林床にはジャノヒゲが花を咲かせている。春から初夏にかけて咲いていた花たちも一通り咲き終わって、林は深い緑に包まれていた。そうするといっそう林のなかは薄暗くなる。林のなかでも比較的高いところに実をつけているオニグルミ。時折吹く強い風でいくつかのまだ青い実が落ちてくるとその存在に気づく。そしてもう一つ林内でよく目にするのは動物たちの死体に群れるシデムシたちだ。ミミズの死体に4、5匹が群がっている。こんなふうに見たもの、気づいたことを少しずつノートに記していく。樹洞と倒木 整然と刈り込まれたキャンパス内のほかの樹木と比べて、林のなかは雑然とした印象を受ける。落ちてしまった枝、倒れた樹木もそのままだ。倒木を避けながら樹木を見てまわると幹や枝にぽっかりと穴が開いたものがある。見つけたなかで一番大きなものは握り拳ひとつ分の大きさだ。これは「洞」とか「樹洞」とか呼ばれる。樹洞ができる仕組みはこうだ。樹木の枝が折れたり、樹皮に傷がついたりするとそこから木材腐朽菌というキノコのなかまの菌類が入り込む(木材腐朽菌の代表的なものはサルノコシカケなど)。それが樹木を腐らせる。しかし、樹木は樹皮を作ってそこには穴が開く。 樹洞は大きなものになると人が入ることのできるほどのものもある。大きさに合わせて樹洞はムササビのすみかになったり、鳥が巣を作ったり。大きなものはクマが冬眠に使うこともある。つるりんの樹洞はまだ握り拳ひとつ分の小さなものだから哺乳類や鳥の巣には適さない。樹洞のなかには小さな生きものたちが隠れている。そのことは幼いころから
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