FN78号
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35誘野外へう一冊バーンド・ハインリッチ 著渡辺政隆訳どうぶつ社 1995年ワタリガラスの謎 ワタリガラスは北アメリカでは珍しい鳥ではない。しかし警戒心が強く、観察しようと立ち止まった人間の姿を遠くに認めただけで飛び去ってしまう。 謎がまた新たな謎を呼ぶあたりワタリガラス研究の過程はまさに推理小説に似ている。そして困難をどのような工夫で乗り越えていくのかが具体的に描かれていて、動物観察をするさいの参考にもなる。いつかこんな自然誌を書いてみたいと思わせる一冊である。 生物の謎解きは推理小説とちがう点がある、と著者のハインリッチは言う。多くの発見をすればするほど、わかっていないことがたくさんあることをますます自覚するようになるからだ、と。本書は、科学が進歩したといわれる現代でいかに身近な自然の世界が不思議と謎に満ちているかを改めて教えてくれる本でもある。 (北垣憲仁) 子どものころに夢中になって追いかけていた昆虫。また、追いかけたくなるきっかけをくれた一冊です。外国の昆虫を思わせるような鮮やかな写真はパラパラと眺めているだけでも楽しませてくれます。 昆虫の顔、サナギ、クワガタのハサミ、虫こぶ……、著者の関心は昆虫そのものだけには留まりません。時には昆虫のちいさな落とし物も一つひとつていねいに集めています。たとえば「ほぼ一生集め」と題してナナフシモドキが一生で食べた葉の食痕はぜんぶで81枚、そしてその間にしたフンは5094粒。ページいっぱいに敷き詰められたフンの写真は圧巻です。私たちからすると小さなちいさな世界ですが、その小さな世界で起こっていることのスケールの大きさに気づかされました。                  (砂田真宏)安田守 著山と渓谷社 2007年昆虫コレクション森の休日5集めて楽しむ盛口満 著山と渓谷社 2003年雑木林は不思議な世界Outdoor 21 Books⑫教えてゲッチョ先生! ゲッチョ先生こと盛口満さんが、埼玉県飯能市 私立自由の森学園で教師を務めていたころのお話。学園の敷地内にある雑木林を舞台に、ゲッチョ先生と生徒たちは小さな発見を積み重ねていく。ドングリを食べてみたり、背中にハートマークをつけたカメムシを見つけたり。何も無いように見える雑木林が、じつはさまざまな生きものや植物との出会いに満ちあふれている場であることに気づかせてくれる。ゲッチョ先生の手描きの、登場する植物や昆虫のスケッチが添えられているのも魅力のひとつ。 本書を読み終われば、これはなんだろう? どうしてこうなるのだろう? と楽しみながら考えを巡らせるゲッチョ先生に影響されて、身近な自然にもっと目が向くようになっているかもしれない。(深澤加奈)本を読んで野外へ出よう。新たな気づきが待っている。

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