FN78号
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̶生徒と本気で向き合う̶中学校は中学校で、行ってみたらすごく魅力があるの。小学校の子どもっていうのは、教師と子どもの関係でしょ。だから理解し合うといっても、限度があるよね。人間としての付き合いっていうのは、やっぱし小学校は大人と子どもでしょ。でも中学校は人生問題でもなんでも、みんなぶつけ合えるでしょ。だから話がきちんとできるのね、中学校は。 家庭科は実践 私が(富士吉田市の中学校に)行ったとき、家庭科の部屋の戸棚に縫ぬいきってないパジャマが、くしゃくしゃいっぱい入ってたの。全部途中の作品だったの。3年生が縫いきらないで卒業してしまったの。 それで私は子どもたちにグラフを作らせたの。たとえばパジャマの過程。一番先に何をするか、その手順ね。それを今日ここまでいったら塗っていこう。そして塗りきれば終わりって。 そのとき生徒に言ったの。家庭科っていうのは実践だよって。ペーパーに書いただけでは役に立たないよ、すべて家庭科は実践だから私は、100点とってもそれが評価じゃない、授業中にやってることが私の大部分の評価だからそれだけ承知してねって。そして、できあがらない人は、放課後に私がいるから家庭科室へきて。教えてあげるから。 そしたらね、卒業するまでにパジャマが全部仕上がって、(山梨)県の家庭科の展覧会で入選した子もいるのよ。 それで校長先生が卒業式のとき「今年の3年生はパジャマを全員縫いきりました」ってそう言ってくれたの。やっぱし、そういう取り組みを通して、子どもに対してきちんとけじめある教育をするって大切。70分の損 でね、その家庭科の時間のなかで、7人くらいが10分以上遅れてきた。で、聞いたの。あんたっち何してたのって言ったらね。「何ちゃんが具合悪くて保健室行ったから、ついてった」って言ったの。だから、その人介護しなければ歩けなかった? って。「ううん、そんなことないよ」っちゅうの。都留市にお住まいの遠えんどう藤静しずえ江さん(80)の経験や生きかたに惹かれた私たちは、遠藤さんの人生観について聞き取りをおこなっています。今回は、25年前に非常勤講師として中学校に勤めていたころのお話を軸に、遠藤さんが考える教員としての姿勢を紹介します。38no. 78 Aug. 2013

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