FN78号
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愛しているから伝える まあ、そんな経験があって、山のなかの中学校へ行ったとき、授業中わいわいするの。それがおもしろいのよ。 家庭科の時間に私が教室に入るなり「先生、今朝何食べてきた」「先生、昨日お休みで何してたの」って聞く子がいるの。Kちゃんっちゅう子でね。Kちゃんは先生とお話したいらしいけども、Kちゃんばっかが相手じゃないんだよ。ここ37人いるんだからね、先生37人相手しなきゃいけないから、おまえの言うことにだけ答えられないよってそう言うの。 すると、またほかの子が何か言うの。Sくんっていう子が、べちゃくちゃしゃべってるの。だから私が幾度もSくん! こっち向いてSくん! ってこう言うの。「なんでおればっか言うんだよ。ほかにだってしゃべってるのがいるじゃんか」って。いや、おまえを愛してるから、私が言ってるんだよって言ったの。そしたらどーっとみんな笑ったのね。 授業が終わったら女の子がついてきてね「先生、私たちは愛してない?」って聞くから、そんなことない。みんな愛してるよ。みんな愛してるけどね、Sくんはああいうことしてるから、愛してるからちゃんとしてほしいと思って言ってるんだよって言ったの。そんで、そのことは私ももう忘れてたよ。 そしたら職員室で先生たちが「遠藤先生が授業に行くと(生徒が)窓を開けて『おーい、恋人がきたぞー』って言ってるけど、あれはなんですか」って言うの。ん? ああ、わかった。それはね、Sくんがもうべちゃくちゃしゃべって、幾度も注意してなおらなくて、私が「なんでおればっか言う」って(Sくんが)言うから愛してるって言ったんだよ。中学生の気持ち おもしろいじゃんね、うんと嫌がっているかと思ったの。そしたらその中学校が、都留市も含めて、中学校の相撲大会で優勝したの。で、校長先生がテレホンカード作ってくれた。その(相撲大会で優勝した)子どもたちが全部メンバーが入ってる。テレホンカードを先生たちみんなに配ってくれたの。 で、見たらSくん入ってるの。そのとき私はSくん入ってるなあと思ったよ。だけど授業に行って、そのことは全然口にしなかった。 そしたらSくんが「先生見た?」ってこう言ったから私はね、あっ見た! Sくん優勝したんだねって言ったら(Sくんが)「無視してもいいよ」。わかる? その中学生の心理。「無視してもいいよ」って言うからね、いや、無視じゃない、先生言い遅れた。一番先に言えば良かったんだよねって。そういう感じだったの。だから心理的には悪い気じゃなかったのね。私が帰るときなど男の子っちみんなバルコニーに出て、「恋人が帰るからさようなら」って言ってくれるの。 やっぱり子どもっていうのは、自分自身をうんと理解してもらいたいの。だから、理解し合ったら絶対背いたりしない。で、理解するっていうのは、温かい目で見るということ、つまり基本的なことね。理解してやるってことが大切なのね。生徒との会話のなかで さっき(話をした)べちゃくちゃしゃべって私に「何食ってきた」っちゅうKちゃんに40no. 78 Aug. 2013

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