FN78号
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no. 78 Aug. 20136H・D・ソローが『ウォールデン 森の生活』(今泉吉晴訳、小学館)で示唆した散歩のほんとうの意味とは何か。散歩をとおして見えてくるものとは。私たちは歩くことで、変貌する自然やまちの今を記録し、フィールド・ミュージアムのたのしみを報告していきます。第21回カヤネズミの楽園をつくる (2)─カヤネズミの巣はなぜ美しいのだろう─ 今年の都留の梅雨明けは7月6日でした。梅雨の期間は1ヶ月ほど。例年になく早い梅雨明けです。 7月6日、オオムラサキが中屋敷フィールドの小屋の庇ひさしで羽化しました。色彩が鮮やかなオスです。フィールドに向かう途中にある柄ひしゃくながしがわ杓流川の橋の付近には、今年はバイカモが白く小さな花を咲かせています。身近なカヤネズミ カヤネズミの庭では、オギが勢いよく生長しています。5月23日には1mにも満たなかった丈が、7月6日には2mを超えました。 カヤネズミの巣は今のところできていません。はっきりとした理由はわかりませんが、まだ巣をつくる気分にならないのでしょう。 カヤネズミは全国的に数を減らしているようです。隣県の神奈川県では減少種に指定されています。住み場所となる草原の減少もその一因ではないでしょうか。しかしかつては私たちの身近な存在だったようです。フィールドへの入り口で稲作をしている清しみずていいち水貞一さん(90)は、毎年秋になるとイネにつくられた巣の場所を教えてくださいましたし、中屋敷フィールドの地主の渡わたなべむねお邊宗男さん(85)からは、クモの巣にかかったカヤネズミをみた経験を伺ったことがあります。お二人とも、そのネズミの体が小さいこと、赤みがかった毛をしていることを話してくださいました。カヤネズミに間違いありません。 中屋敷フィールドでは今のところ巣はみつかりませんが、ほかの場所ではどうなのでしょうか。ソフトボールほどの大きさの球状の巣があれば、カヤネズミが生息する目印となります。7月14日、さっそく近くの十日市場で探してみることにしました。さまざまな素材を用いた巣 十日市場にはススキやオギ、ヨシなどイネ科植物の群落が点在しています。農道を歩いてみると、ススキの群落に巣をみつけました。ただし巣に近づきすぎるとカヤネズミが子育てを放棄してしまうかもしれません。5mほど離れて双眼鏡で観察することにしました。高さ約1mの位置にあるこの巣は、直径が10㎝ほど。ススキの葉を幅5㎜ほどに裂き、編
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