FN78号
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7み込んでつくっています。葉脈に沿って裂いているため、巣は緑色を保っていました。数本のススキの茎を支柱にしているため、風が吹いても落下する恐れはなさそうです。 スゲの仲間につくった巣は、もともと葉の幅が5㎜ほどなので裂くことはせず、細い葉をそのまま編み込み巣をつくってあります。密生したスゲの葉に覆われていて、ていねいに探さないとなかなかみつけることはできません。いつでも逃げ出せるためでしょうか、巣の出入り口は2箇所あります。 意外な植物を用いた巣もありました。スギナを使った巣です。密生したスギナの葉をたぐり寄せ地面に接するようにしてできていました。カヤネズミの巣材はイネ科の植物が中心だと思い込んでいたため、スギナを使った巣をみたのは初めてのことです。 どの巣も葉を裂いたり、そのまま編み込んだりするなど、葉の形や性質にあわせて柔軟に対応してつくられています。しかしどの巣も球状で、いくつかの茎を支柱として使い、風が吹いても簡単には落下しない仕組みになっています。 巣のなかはどうなっているのでしょう。ススキの葉を使った古巣を調べてみることにしました。巣の断面を見ると二重構造になっています。子育てをする場所にはススキの穂を、外側には細かくススキの葉を裂いたものを使っています。これだと雨に濡れてもすぐに乾き、風通しもよく、内部は保温が利きそうです。 巣が美しい理由 カヤネズミの巣をみつけるたびに、私はこの巣の形も構造も簡素で美しいと感じてきました。余計な作為のあとはみえず、ただ子どもを育てるためだけに機能的につくられているからです。 無心でつくられた簡素で生活に即した物は美しい、と民みんげい藝運動の創始者である柳やなぎむねよし宗悦氏(1889〜1961)は民衆の日常使いの品を高く評価しました。カヤネズミのこの球状の巣をいつみても美しいと私が感じるのも、これと同じ理由によるからではないかと思うのです。 北垣憲仁(本誌発行人)=文・写真スギナを使ってできた巣。地面に接するようにできていた(2013年7月14日)スゲの仲間につくられた巣は、なかなかみつかりにくい(2013年7月14日)ススキの葉を使いハンモックのように吊り下がる巣(2013年7月14日)
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