FN79号
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no. 79 Dec. 201310アカネズミ 森を歩いていると、斜面などに直径3㎝ほどの穴が開いているのを見かけます。この穴は、モグラ類が開けたものかもしれません。こうした穴をアカネズミは移動や食事場として利用することがあります。 アカネズミはクルミが大好物です。森を歩いているとクルミに丸い穴をあけた食痕が見つかることがありますが、これがアカネズミの食痕です。石の隙間などを探してみるとこうした食痕が多数見つかることもあります。狭い空間がアカネズミにとって安心できるということでしょう。 そこで小さな水槽などを利用して狭い空間を再現してみましょう。なかに好物のクルミやヒマワリの種を置いておくと、アカネズミがやってくるでしょう。ガラス一枚隔てただけで安心して食事をするようすが観察できるようになります。 この装置を使うことで、相手の暮らしに干渉することなく観察できます。私たちのフィールド・ミュージアムではこの装置を「出会いの箱(エンカウンタースペース)」と呼ぶことにしました。ヒミズ モグラは地中で、自分の住み場所やトイレ、通路などすべての空間をつくり出す哺乳類です。日本は世界でも珍しくモグラの種類の多い国です。なかでもヒミズは、世界でも最小クラスのモグラです。 ヒミズは、昼間でも活動しています。森のなかの倒木をそっと持ち上げてみると、たいていトンネルを見つけることができます。直径が3㎝ほどのトンネルが見つかったらそれがヒミズのトンネルです。モグラの仲間は、トンネルの壁や倒木など、固いものに体が触れていると安心するようです。 そこで、倒木の代わりにガラスを置いてみます。ガラスの下にはヒマワリの種を置いてみましょう。ヒミズがいれば、数日してガラスの下にトンネルができるようになります。毎日、ほぼ同じ時間にヒマワリの種を置いておくと、やがて青みがかった毛色のヒミズが観察できるでしょう。 ガラス一枚隔てただけで、トンネルのなかを素早く移動するヒミズと出会えるようになります。北垣憲仁(本誌発行人)=文・写真 ①アカネズミの毛色は、赤みがかった褐色をしている②アカネズミがクルミの実を食べた痕。中央に丸い穴を開けるのが特徴③水槽を使った観察装置。お互いの暮らしに干渉しないで観察できる②ヒミズは倒木の下などにトンネルをつくる③倒木の代わりにガラスを置いてみる。生きたヒミズに出会える①ヒミズは世界でも最小クラスのモグラ類。鼻が長いのが特徴の一つアカネズミヒミズ

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