FN79号
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no. 79 Dec. 201326秋の声を聞く舟田早帆(社会学科1年)=文・写真アオマツムシを追いかける 虫の声が気になったものの、聞こえてくる声が何という名前のどんな虫のものなのか、生きものに詳しくないわたしには分からない。そこでわたしは生きものに詳しい編集部の西にしのりお教生さんに相談し、鳴いている虫についてじっさいに野外へ出て教えてもらった。 10月10日17時30分、コミュニケーションホール横で虫を探す。あたりはもう暗くなっていた。 最初にリーリーと高音で澄んだ声が聞こえてきた。小さな鈴を耳元でたくさん鳴らされているようだ。これはアオマツムシの声だそう。木の上に生息するアオマツムシの声はまるで降ってくるように聞こえる。はじめはきれいだと思ったが、同じ声をずっと聞いていると頭が痛くなりそうだ。数も多いらしく、ほかの虫の声を聞こうとしてもアオマツムシの声にかき消されてしまう。西さんに言われるまで、ツヅレサセコオロギやエンマコオロギが鳴いていることに気づけなかった。 その後20分ほどアオマツムシの姿を探したが、見つからなかった。声だけは聞こえてくるのに、姿が見えないというのが悔しい。それに声を聞いただけでは、虫たちがそこにいるという実感がわかない。図鑑で姿を見ても、その気持ちは変わらなかった。自分の目でその姿を確かめたい。そうしなければ虫のことを知っているとは言えないだろう。 それからはアオマツムシの声が耳に入ってくれば、とりあえず立ち止まりその声を注意深く聞くようになった。いそうなところに見当をつけてその姿を探すが、アオマツムシは見つからない。なんだかもてあそばれている気分だ。しかし、10月中旬に台風26号が過ぎて気温が下がると、大学周辺にいるはずのアオマツムシはとつぜん鳴かなくなってしまった。寒さに耐えられなくなったのだろうか。8月も中旬を過ぎたころ。夕方、本学からアパートへ帰るとき、虫が鳴いていることに気がつく。ふだんは聞き流していた虫たちの声を意識して聞いてみると、声の種類が一つではないことが分かった。10月に入ると虫たちの声はさらに大きくなっていた。声を頼りに秋の鳴く虫に近づいてみよう。アオマツムシのメス。鳴くのはオスだけだが、大きさや外見はほぼ同じだ本学コミュニケーションホール横。10月10日にこのあたりで虫を探した

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