FN79号
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33金勝さんの作業場。40年間以上続けていらっしゃる洋裁と編み物教室の教室でもあるる技術を使わなきゃもったいない」と思い、その後も洋裁を続け、その傍らで編み物も習い、今ではご自宅で洋裁と編み物の教室を開いている。 長年のあいだ洋裁と編み物を続けている金勝さんに、今まで続けてこられた理由をうかがうと、「(つくっているときの)環境が違うから飽きないのよ、自分が。その人(渡したい人)の要求に合わせてつくるから楽しいんだよね」との答えが返ってきた。同じ種類の服でも渡す相手によって使う材料の組み合わせや色、大きさなども違う。自分で考えて工夫をしながら、相手に合ったものをつくりだせるのが手づくりの醍醐味だ。どうしたらその人の要求に応えられるのか、それを楽しみながら考えているから、金勝さんは今も洋裁や編み物を続けているのだろう。「交流のお返し」 金勝さんがつくったものを見せていただく。「これは孫に編んでるの。今年の冬は冷えるっていうから」。「これは娘がピアノの発表会だっていうからつくったドレス」と一つひとつを紹介していただくなかで、ご家族に向けてつくられたものだという話を多く聞いた。私がご家族に向けてよくつくられるんですかと聞くと、「だって可愛いものを(娘や孫に)着せたいじゃない」とすぐに笑顔でおっしゃる。お孫さんに向けて浴衣から服をつくるときも、なるべく柄の大きさが細かくて可愛いものを選んだり、洗濯がしやすいように木綿を選んだりして工夫をしているそう。 ご家族の反応もうかがった。たとえば、浴衣からつくったパジャマを、ご主人は夏のあいだ大切にしていたらしい。お孫さんは毎日のように、つくってもらったエプロンをつけたいから料理の手伝いをしたいとよく言っているそう。金勝さんのご家族が、金勝さんがつくった服を喜んで着ている姿が想像できて微笑ましい。「うちの家族っておもしろいよね」と度々おっしゃる金勝さんはとても嬉しそうな表情をされていた。金勝さんのご家族への愛情が伝わってくる。 「たとえば、お野菜とかもらったお礼に(手づくりのものを)プレゼントすると喜んでくれるよね」とおっしゃる金勝さんにとって、渡したい相手を思ってつくることは、「交流のお返し」だという。その人のことが好きだから喜んでもらいたいという思いが、金勝さんがつくったものにはこめられている。 取材後、「交流のお返し」に金勝さんから手づくりのティッシュケースや巾着袋、マフラーをいただいた。そのとき私は、嬉しい気持ちでいっぱいになり、自然と笑みがこぼれた。そのあとも、いただいたものを毎日のように大切に使っている。こうしても﹅﹅のを通してつくった人ともらう人とのお互いの気持ちが通じ合っていくのかなと思う。渡したい相手を思ってつくること、そこには人とのつき合いを大切にする「ありがとう」の気持ちがカタチとなって表れているのだ。
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