FN79号
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35ビアンカの店内。雑貨が並ぶ棚は深澤さんのお父さんの手作り。わざわざ深澤さんが経営当時のようすを再現してくださったンカに向かうと、いつ来ても閉まっていた深緑色の扉が開いている。店内はどうなっているのだろうと恐るおそる覗き込んでみる。するとそこには、可愛らしい洋風の雑貨と、木で作られた小さめのテーブルや椅子があった。暖色の明かりに照らされた店内は、カントリー調にまとめられいる。素朴であたたかな雰囲気はさっきまでの寒さを忘れさせてくれるようだ。 私が店内に釘付けになっているとき、深澤さんがお店の奥から出て来られた。私が想像していたよりも若々しく、お店の雰囲気に合うおしゃれな服を着ている。 入口で初めて深澤さんにお会いしたときから席に着くまで、ごくありふれた世間話しかしていない。けれど私は、そのあいだのちょっとした深澤さんの言葉や動作のなかに「ぴしっとしたなにか」を感じた。ビアンカの開店とその後 まずは深澤さんにビアンカを始めた経緯をうかがう。 深澤さんは、偶然もらった雑誌で初めてカントリー雑貨というものを知り、その魅力に惹かれた。けれど、10年ほど前の都留市ではカントリー雑貨はあまり知られていなかった。そこで、素敵な雑貨があることを伝えたいと思った深澤さんは、2000年にビアンカを開いたのだ。そんなお店へのこだわりは、自らの目で見て好きだと思ったものを置くことだったそうだ。ただ、小さな個人のお店には商品を卸してくれない問屋さんもあった。それでも深澤さんは、問屋さんの理解をえるために、どこで何をどうやりたいのかといったお店への熱意を語って商品を仕入れていたそう。 「これはもう熱意だと思って。絶対これ(お店)はやりたいって、その思いだけで突っ走って」と笑いながらおっしゃる深澤さんは、困難すらも楽しんでいたかのようだ。 最初は雑貨屋さんとしてできたビアンカだったが、開店から6年後にはギャラリー喫茶へと改装する。売る雑貨の数を減らすことで、お茶を飲みながらおしゃべりができるような場所に変わっていった。そこには、家庭外で人とのつながりを持つのが難しい主婦にとっての憩いの場となれば、という深澤さんの思いが込められていたのだった。

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