FN79号
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no. 79 Dec. 201336 けれどビアンカは2007年に閉店してしまう。そのころになると都留市にもカントリー雑貨を手に入れられるような大型量販店ができていた。 深澤さんに、閉店の理由を尋ねてみる。すると、「どこか見つけに行って出したいっていう雑貨がもうそんなにないなあと思ったから、じゃあここらへんで終わりにしようと思って」とさらりとおっしゃった。深澤さんは、惜しむ気持ちや後悔はなく7年間自分のやりたいことをやりきった、そんな気持ちで「ギャラリー喫茶ビアンカ」に幕を下ろしたのだった。やりたいことに一直線で進む お客さんのなかには深澤さんのように自分のお店を持ちたいと思っていたかたも少なくなかった。けれど深澤さんがおっしゃるには、十数年前は女性が自分で何かを始めることが少なかったそうだ。だからお店を開きたいと思っていても、じっさいにするには勇気が必要なこともあったのだ。 そんななか深澤さんは、主婦が何かを始めるという道を先頭に立って切り拓いていく。まわりの人がこうだから、世間がこうだからではなく、自分がしたいと思ったことに一直線に進んでいた。誰もしていないことをするというのはとても勇気のいることなのに、なぜ深澤さんはこんなにも行動に移せるのだろう。深澤さんは言う。「とにかく、あの時こうしたかったなあっていうのだけは嫌なんですよ。50過ぎたら余計にそれは思うんですよ、それだけは。やりたいとか、好きってことはやっとかないと」 深澤さんはいつでも好きなことにまっしぐらだ。 深澤さんと初めて会ったときに感じた「ぴしっとしたなにか」。どうしてそう感じたのか初めはわからなかった。けれど、深澤さんと話しているうちにわかってきたことがある。それは、深澤さんはどんな質問をされてもいつも明確な言葉ですぐに答えを返すということだ。 これは、聞かれたことについて深い思いを持っていなければできない。思い返せば、開店したとき、改装したとき、閉店したときなど、ビアンカに起こったすべての出来事に深澤さんの強い思いが反映されていた。そして、これほど強い思いを持てるのは、深澤さんのなかにやりたいという気持ちがいつでもあったからだと思った。 だから、あのとき感じた「ぴしっとしたなにか」は深澤さんのやりたいと思う強い気持ちの表れだったのだろう。好きなことに本気になれる、やりたいという思いに正直になって一心に進む、そんなふうに夢中になって道を切り拓いていく深澤さんの姿がかっこよかった。深澤さんとお店の常連だったお客さん。今でもつながりは途絶えていない(舟田早帆=写真)伊藤瑠依(社会学科1年)=文・写真

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